宇宙空間でイオンが電子より高温になる理由を解明―プラズマ中の“音波”がイオンを選択的に加熱―
東北大学学際科学フロンティア研究所の川面洋平助教(大学院理学研究科兼任)を中心とした国際チームは,国立天文台の「アテルイⅡ」をはじめ複数のスーパーコンピュータ用いたシミュレーションによって,太陽風やブラックホール降着円盤を構成する宇宙プラズマ中のイオンが電子よりも高温となるメカニズムの解明に成功しました.宇宙プラズマの乱流中には縦波的ゆらぎと横波的ゆらぎが存在していますが,これまで行われてきた横波的ゆらぎのみを考慮した研究では,イオンが高温となるような理由を必ずしも説明できませんでした.本研究では,世界で初めて縦波的ゆらぎを含む無衝突乱流を計算し,イオンが縦波的ゆらぎのエネルギーを選択的に吸収することで電子より高温になることを突き止めました.この結果は,2019年に公開されたイベント・ホライズン・テレスコープによるブラックホールの影の撮像結果を解析する際にも重要となります.
本研究の成果は,2020年12月11日に発行された米国の科学雑誌「Physical Review X」に掲載されました.