超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く

【概要】

国立天文台の泉拓磨氏,鹿児島大学の和田桂一氏を中心とする研究チームは,アルマ望遠鏡を使ってコンパス座銀河の中心に位置する超巨大ブラックホールを観測し,その周囲のガスの分布と動きをこれまでになく詳細に明らかにすることに成功しました.活動的な超巨大ブラックホールの周囲にはガスや塵のドーナツ状構造が存在すると考えられてきましたが,その成因は長年の謎でした.今回の観測結果とスーパーコンピュータ「アテルイ」によるシミュレーションを駆使することで,超巨大ブラックホールの周囲を回りながら落下していく分子ガス円盤と,超巨大ブラックホールのすぐ近くから巻き上げられる原子ガスの存在が浮かび上がり,これらの「ガスの流れ」が自然とドーナツ的構造を作っていることが確かめられました.この結果は,存在そのものは天文学の教科書に掲載されていながら,その詳しい構造・運動・形成メカニズムがわかっていなかったドーナツ状構造の正体を暴いた,重要な成果といえます.(2018年11月30日 プレスリリース)

内容の詳細についてはこちらをご覧ください:国立天文台アルマ望遠鏡 プレスリリース「超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く」



図1:アルマ望遠鏡で観測した、コンパス座銀河の中心部。オレンジ色で一酸化炭素の分布を、水色で炭素原子の分布を示しています。(クレジット:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Izumi et al. )
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図2:
[左]超巨大ブラックホールを取り巻くガスのイメージ図。(1) ブラックホールを取り巻く円盤の中で、回転しながらブラックホールに落下するガス、(2) ブラックホール周辺から噴き上げられるガス、(3) (2)の一部が重力によって円盤に落下してくる成分、の3つが合わさることでドーナツ構造ができています。(クレジット:国立天文台)
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[右]スーパーコンピュータ「アテルイ」によるシミュレーションで示された超巨大ブラックホール周囲のガスの分布の断面図.矢印でガスの動きをあらわしています.中央のブラックホールに向かって落下するガス,両極方向(図の上下方向)に噴き出すガス,そして重力に引かれて円盤部分に落下するガスの動きと分布が示されています.黄色や赤の部分は密度が高い領域で,ブラックホールの両側に厚みのある構造ができていることがわかります.(クレジット:Wada et al.)
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【本研究で使用されたスーパーコンピュータについて】

本研究では,活動銀河核周辺のガスの運動や構造のシミュレーションを行うため,スーパーコンピュータ「アテルイ」(Cray XC30)が用いられました.アテルイは国立天文台が運用する第4世代のシミュレーション天文学専用スーパーコンピュータで,1.058 Pflops の理論演算性能を有し,2013年4月から2018年3月まで国立天文台水沢キャンパス(岩手県奥州市)で運用されていました.(右画像 クレジット:国立天文台)



【論文について】

題目:"Circumnuclear Multiphase Gas in the Circinus Galaxy. II. The Molecular and Atomic Obscuring Structures Revealed with ALMA"
掲載誌:Astrophysical Journal
著者:Takuma Izumi, Keiichi Wada, Ryosuke Fukushige, Sota Hamamura, and Kotaro Kohno
DOI番号:10.3847/1538-4357/aae20b

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国立天文台アルマ望遠鏡 プレスリリース「超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く」
国立天文台 プレスリリース「超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く」