シミュレーション天文学を支える人々(1):加納香織さん

研究支援員の加納香織(かのう・かおり)さんは,CfCAの円滑な運営には欠かせないスタッフ.サーバやユーザーの管理から,細々とした作業まで,なんでもこなしてくださる頼もしい存在です.でも,サーバ管理はCfCAに来てから初めて行った仕事とのこと.新しい仕事でもどんどん挑戦するバイタリティあふれる加納さんをご紹介します.



画像1:計算サーバと加納さん.CfCAに来てすぐの頃には計算サーバの組立も行いました.(クレジット:国立天文台)

――加納さんが,普段CfCAでしているお仕事について教えて下さい.

加納:普段やっている仕事は,計算機ユーザーの管理です.

CfCAが運用する共同利用計算機を利用するためには審査が行われるのですが,その審査結果が出てからユーザーが計算機を使えるようになるまでの準備作業をしています.具体的には,審査結果を個人と紐付けたデータベースに入力したり,ベンダーに計算機のIDとパスワードをユーザーごとに作ってもらうために連絡をしたり,といった作業です.

気をつけるところは,審査委員やベンダーなど,間に外部の人が入りますが,セキュリティ上CfCA側のデータベースを外部の方が直接閲覧・編集できないので,どうしても自動でできない部分があり,手動での作業が発生してしまいます.ですので,できるだけ間違いがないようにダブルチェックを徹底するところです.とても事務的な作業ですね.このあたりは,私は事務仕事の経験もあるので,割と得意な分野かなと勝手に思っています.

――共同利用計算機の直接の運用ではないですが,研究者が計算機を使う上では欠かせないプロセスですね.

そうですね.また,毎月CfCAがユーザー向けに発行するニュースレターの発送も行っています.このニュースレターでは,メンテナンスの予定や講習会・ユーザーズミーティングの案内,CfCAからユーザーへのお願いなどをお送りしています.また,ユーザーと直接やりとりをすることはあまりないですが,何か問題があると問い合わせが来るので対応することはあります.

それから,普段やっている仕事としてはCfCAのウェブサーバの管理もあります.CfCAではDrupalというCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を使っているのですが,この大型アップデートがあると試験環境の準備とソフトウェアの調査,試験で1-2ヶ月を要することもあります.アップデートによってウェブページのデザインが変わってしまうこともあるため,デザインの調整も行っています.Drupalのシェアがあまり高くないこともあって,ググっても参考情報が少ないんですよね.ちゃんと動くのかな,といつもドキドキしながら更新しています.

――これも誰が仕事をしているのかなかなか表には出ない仕事,まさに縁の下の力持ちといったところですね.

あとは雑用.頼まれれば何でもやります(笑).雑用というと怒られるかもしれませんが,スタッフみんなで行う作業に人足として参加してます.講習会の準備で会場を設営したり,サーバの引っ越しでケーブルを巻いたり伸ばしたり,ラックを組み立てたり,HDD交換したり.あとは,研究者の方は割と時間感覚がルーズなので(笑),滞っている作業にはやんわりリマインドしています.

――耳が痛いところです(笑).ところで,加納さんは天文学が専門ではないんですよね.

バリバリ文系です.学生時代は国語の先生を目指していたのですが,コンピュータを使った自然言語処理の授業が面白かったので,ぐるっと進路を変更してIT業界に進みました.とは言え,コンピュータについては授業で触った程度で,専門的な勉強はしていません.新卒で入った会社でUNIXやデータベースの操作からプログラミングまで,みっちり鍛えられました.そういえば,入社当時コンピュータの部品を覚えるためにPCの自作をしたのですが,CfCAに来たばかりのときも,コンピュータ部品の組み立てから始まったので懐かしかったです.

ちなみに国語の先生を目指していたとはいえ,文章力は期待しないでくださいね(笑).個人的には古文・漢文が好きだったんです.漢文なんてちょっとプログラミング言語に似てますよね.あれ,似てない?



画像2:[キャプション] CfCAウェブサーバの定期メンテナンス作業中の加納さん.手前に見えているのは,計算サーバのテスト用機材.(クレジット:国立天文台)

――これまでのCfCAメンバーの中では珍しいバックグラウンドだと思います!そんな加納さんが天文台ではたらくきっかけって何だったんでしょう?

国内IT企業で数年はたらいて,その後外資系IT企業に転職したのですが,あまりの仕事のハードさに子育てしながらできる仕事じゃない!と1年も経たずに退職してしまったんです.しばらく専業主婦をしていたのですが,子供が大きくなったので家の近くで働こうと思い,ハローワークに行ってみたところ,国立天文台にウェブサイト更新の業務があったので,これだ!と思い応募しました.それまで三鷹に国立天文台があることは知りませんでした.

最初は(CfCAとは別の部署の)事務支援員としてウェブサイト更新をメインに気楽に働いて,一旦退職したのですが,またご縁があって国立天文台に戻ってきてCfCAで働くことになりました.しかし今度は,研究支援員として久しぶりにUNIXを触ることになり,慣れるまで大変でした.コマンドは全く忘れているし,ソフトウェアも知らないものばかりだったので.

――では,これまでの経験をいかすというよりは,CfCAに来てからかなり新しいことをはじめたと.

特にサーバ管理の仕事はCfCAからが初めてですね,皆さんに聞きながら,勉強しながらやっています.CfCAに入っていきなり一番最初に「やって」と言われたのが,ウェブサーバをhttpからhttpsにして,という作業.そういう作業は始めてで,証明書のなんたるかから勉強しました(笑).

また,講習会の報告書を書くという仕事もあったのですが,天文学の知識がなかったのでハードルが高かったですね.でも,これまでにやったことの無いことでも,おもしろそうだな,とりあえずやってみるか,とそんな感じで取り組んでいます(笑).

――最後に伺いたいのですが,天文学を支えるお仕事って,やってみてどうでしょう?

一生懸命天文学を研究している若い方を,母親のような気持ちで見ています.自分の子供のサッカーの試合を応援するのと同じですね.サッカーがわからなくても天文学を知らなくても頑張る人を応援するのは楽しい(笑).

スーパーコンピュータを利用した天文学なんて最先端でしょうから,研究者や学生の皆さんがその道のパイオニアとなっていってくれたらうれしいですね.微力ながらお手伝いしたいと思います.

――どうもありがとうございました,これからもどうぞよろしくお願いします!

インタビュー担当:福士比奈子(CfCA/4D2U広報)
本記事は,2021年9月29日から10月20日にかけて,メールと対面で行ったインタビューをまとめたものです.