5.3 主要研究項目A01 とる

[研究内容]

46億年前の地球の生成から現在に至るまでの間に生起したさまざまな変動やイベントは,堆積物や玄武岩,花崗岩等の火成岩などにそれらの痕跡をとどめて記録されているはずである. 従来の堆積物研究では,主に2億年より新しい時代の深海コアを材料として詳しい解析が行なわれていたが,ここでは,世界に先駆けて2〜40億年前の深海底堆積物連続試料を採集し,全地球史にわたる地球変動像を解明するための物的データベースを構築する. 40億年より古い岩石はまだ発見していないが,その探索採取もこの班の重要課題である.

研究の具体的項目は次のように整理できよう.

  1. 選定された世界各地域の地質調査を行なって,2億年から40億年前の間に堆積した深海堆積物試料を一億年間隔で40試料収集する. 地質調査地域の選定には,世界の造山帯の最新情報を入力したデータベースを変更しつつ,特にイベントE3, E4, E6の解明に最適な試料の得られる地域を選定する.現在までに丸山,磯崎が中心になってグリーンランド,カナダ,西オーストラリアなどから集めた試料の採集状況を右ページに図1,表1に示す.
  2. 地質調査によって得られた深海堆積物試料の基本的一次的処理(岩石記載,放射年代の測定,放射性元素の異常濃集層準の特定など,ODPで行なわれている基礎的記載のこと)を行なう. これをもとに,完全連続ではないが,地球史の大局的特徴(地球外物質の流入や海洋の酸素欠乏イベントの存在など)を示す「地球史柱状図*」を作成する. さらに精密な分析によって,宇宙化学的環境と生物圏の変動の検出もなされる.
  3. 40億年前に遡る1日周期,1年周期,ミランコビッチ周期を解析するために,それらの情報が記録されている地層の調査を行ない,ストロマトライト(p.16 の写真),縞状鉄鉱層(p. i の写真)などを採集する. これらの試料は膨大な長さになる為に,数億年間隔で集める. 従って完全連続ではないが,月-地球回転力学系の進化と地球史解読用時計の第一次近似的特性解明に向けて,よむ班とけい班によって解析される. 同時に,太陽活動の変動を示す成果も得られるものと期待できる.
  4. 固体地球の内部進化における永年変化(トレンド)を読み取るため,マントル由来物質をふくむ中央海嶺玄武岩,中央海嶺近傍で生成した鉱床,および花崗岩試料なども併せて採集し,記載する. これらの試料からは上部マントルの熱的状態や物質循環や地球磁場の変動を読みだせるものと期待できる.

[研究組織]

班長  丸山茂徳    東京工業大学理学部    教授		地質学
 	   (地質調査,試料採集)
副班長 磯崎行雄    東京工業大学理学部    助教授	古生物学
     (地質調査,試料採集)
    加藤泰浩    山口大学理学部      助手		鉱床学
     (地質調査,試料採集)
    増田俊明    静岡大学理学部      助教授	構造地質学
     (地質調査,試料採集)
    椚座圭太郎   富山大学教育学部     助教授	変成岩岩石学
     (地質調査,試料採集)
    荒井章司    金沢大学理学部      教授		火山岩石学
     (元素分析)
    兵頭政幸       神戸大学理学部       助教授 	古地磁気学
      (地磁気測定)
協力者 平田大二    神奈川県博物館      学芸員	地質学
     (元素分析)
(8名)

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