全地球史解読計画の検討の過程で,作業仮説として新しい地球史像が浮かび上がってきている(24ページ参照).全地球史解読計画重点項目(イベント E3, E4, E6)の解明,および地球史におけるある特定の1年あるいは1日の記録を解読するために,図1と表1に示された岩石種,場所,および年代の異なった試料が既に綿密な地質調査に基づいて収集保管されている.もしくは収集計画段階にある.
地球外物質の注入事件を解読するには,堆積速度の遅い深海堆積物のイリジウム濃度異常を検出すればよい.グリーンランドのイスア地域で採集されたチャートから,すでにいくつかの異常が発見されている(36ページ).分析用の試料としては,35億年前のオーストラリアのピルバラ地域から約45mの連続試料,同じくクリーバービル地域からは約40mの31億年前の深海堆積物連続体が確保されている.19億年前の試料は北米東部地域で採集の予定である.
地球史の特定の一日あるいは一年の解析用試料は,BIF*,ストロマトライトが適当である.35億年前のオーストラリアのピルバラ地域のBIFは,すでに解析が進められている.また,19億年前のカナダのストロマトライトも確保されている.他の時代の試料は図1,表1に示された地域から採集する予定である.
図1.試料採集の現状.現在までに調査採取してきた深海堆積物の産地. その形成年代と付随する採取岩石の年代を下の表1に示す.
表1.試料採集の現状.形成年代と試料の種類
写真. グリーンランドイスア地域における38億年前のBIF,チャートの試料採集現場.