口絵


地球史7大事件


縞状鉄鉱層


太古代/原生代(Archaean/Proterozoic)境界の謎

これまでは太古代/原生代(A/P) 境界の年代として25億年が採用されてきた.近年の高精度年代データによれば,世界各地の火成岩の年代頻度分布には約27億年前に顕著なピークがあり,この時期は確かに火成活動は活発であった(図A).加えて地球磁場強度も急激に増大しているので(図B),その原因を核に求め,核内安定成層の崩壊イベントの存在が提案された.

しかし,地質時代を画するイベントとして相応しい大陸の集合分裂の繰り返しのはじまりと著しい火成活動が,これまで注目していなかった,ほぼ19億年前に同期している事実が明らかになった.しかも地球外物質の落下頻度の急増もこれと時期を同じくしている.

したがって,われわれはA/P境界問題を従来とは変えて,次のように設定し直す.

「27億年前から19億年前までの期間を新らたに一つの地質時代として認識し, それを画する少なくとも前後2つの大イベントそれぞれについて,実体と原因,相互の関係はいかなるものであるか?」と問う.

図:


古生代/中生代(P/T)境界大量絶滅事件の発生原因:
超酸素欠乏と超大陸の形成

古生代/中生代境界,すなわちペルム紀(Permian)/三畳紀(Triassic)境界で,地球生物進化史における最大の大量絶滅が発生した.海生生物に関してはほとんど皆殺し状態であった.わが国でこの大絶滅の謎を解く深海底堆積物が世界で初めて発見された.写真は,愛知・岐阜県境の犬山地域の木曾川河岸のP/T境界層(黒色の帯の部分)である.一般に深海底チャートには赤鉄鉱が含まれているため赤っぽい色をしており,酸化的な環境で堆積したことを示唆している.ところが2億5千万年前のP/T境界付近では,チャートは暗緑色で,その間に黒色泥質岩がはさまっている.これらは当時の海洋環境が還元的(酸素欠乏)であったことを物語っている.P/T境界頃の深海底で酸素欠乏状態が継続したのは約1千万年間と見積られている.このような酸素欠乏事件は過去6億年にただ一度おきた特異な出来事である.この超酸素欠乏事件に関して,この時代に大陸がひとところに集まって超大陸パンゲアが形成されたことを究極の原因とする説が提案されているが,これを検証する必要がある.

P/T境界事件の原因の解明は西南日本に分布する遠洋性深海堆積物の詳細な調査によってはじめて可能となる.古生代/中生代境界に同時に起きた,超大陸の形成,超酸素欠乏環境の出現,そして生物の大量絶滅という三つの特異な事件の間の因果関係の究明は地球科学上の最も重要なトピックスの一つである.

写真: チャート層中の灰色帯.向かって右側の中生代初頭のチャートは赤っぽいが,左にかけて,古生代・中生代の境界に近いほど灰色味が増していく.


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