3.申請までの準備・調査の状況

1980年代にプレートテクトニクスに基づく固体地球科学研究の発展に貢献した文部省特別事業「国際リソスフェア開発探査計画(DELP計画)」は89年度に終了した. ポストDELPとして何をやるのかについて,固体地球科学界から広範な意見が集められ,MULTIER計画(地球多圏間相互作用計画)が採択された. その研究項目の一つに,リズム(多圏地球の周期的・非周期的摂動)が取り上げられた.この頃から自然界の縞模様やさまざまな周期現象に関心のある研究者が研究集会を開いていたが,1989年縞縞学研究会を発足させた. これらを受けて90-92年総研(A)「初期地球におけるダイナミクスと多圏相互作用」,90-91年総研(A)「地球のリズムと縞状構造」などの科学研究費による研究が実施された.

そこでは自然界のリズムや縞状構造が博物学的に集められると同時に,非線形システムの出力としてリズムや縞縞をとらえようとする新たな視点が提示され,非線形解析やモデリングが行われた. 一方で,地球のリズムを地球システム科学の視点に立った研究の題材として積極的にとりあげ,地球の多圏相互作用を正面から解明しようとする機運が急速に高まった. 昨年度,「全地球史解読」−40億年の物理的地球環境と多圏地球相互作用−という課題名で重点領域研究が申請されたが,採用にならなかった. われわれが解明をめざす目標は大きく広範にわたるため,具体的目標をしぼりきれなかった.

その後もわが国の地球史研究グループの地質学者によって2億年以前の深海底堆積物が系統的に集められている(口絵写真26ぺ−ジ参照). また,昨年の重点領域研究申請の研究分担者を中心として「全地球史解読」を具体的にどのように実行するかについて話し合い,研究の戦略レベルからテクノロジー開発戦術にいたるまでインテンシヴに吟味した. すでにテクノロジ−の一部は実際に開発が開始され,デ−タの読み取りが試験的に始まっている. その結果重点目標をいくつかに絞り,研究戦略と必要なテクノロジーに改良を加えて本重点領域研究を再び申請することにした.

1993年3月19-22日の地球惑星関連学会合同大会(東京都立大教養)では,MULTIERの主催による「初期地球」,「宇宙のリズムと地球システム変動」の二つのシンポジウムが開催された. また異分野交流フォーラム「地球環境進化ー40億年」(科学技術庁主催)が1993年3月7-13日に福岡,犬山,名古屋で外国人研究者10名を交えて開催され,地球システムの研究という立脚点のもとに国外・国内の研究者と交流し,犬山市のP/T境界の酸素欠乏事件を示す地層を見学した. このフォーラムのプログラムと報告を巻末Bに示す. 1994年3月20-23日の地球惑星関連学会合同大会(東北大)では,MULTIERの主催による「全地球史解読」−リズム・イベントとマントルダイナミクス−が開かれる. 上に述べた準備過程の中で行なわれたシンポジウム,ワークショップ,巡検を右に列挙する. 今年度行なわれた最後のシンポジウムについてはプログラムと参加者を参考資料Cに示す.


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