ニュース

M87 巨大ブラックホールの降着円盤とジェットの同時撮影に初めて成功

国立天文台や東京大学の研究者らが参加する国際研究チームは,波長 3.5 ミリメートル帯で観測する地球規模の電波望遠鏡ネットワークを用いて,楕円銀河 M87 の中心部を詳しく観測しました.その結果,巨大ブラックホールの周囲に広がる降着円盤の撮影に初めて成功するとともに,ジェットの根元の構造をこれまでで最も高い視力で捉えました.本成果は,巨大ブラックホールに落ち込むガスから膨大な重力エネルギーが解放される現場を初めて直接的に捉えたもので,ブラックホールジェットの駆動メカニズムの解明を大きく前進させる成果です.詳しくは以下をご覧ください.
国立天文台プレスリリース:M87 巨大ブラックホールの降着円盤とジェットの同時撮影に初めて成功
EHT-Japan プレスリリース:M87 巨大ブラックホールの降着円盤とジェットの同時撮影に初めて成功

木星と土星の不規則な運動が地球型惑星たちの形成の鍵を握る

近畿大学総合社会学部のソフィア・リカフィカ・パトリック 准教授と国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの伊藤孝士 講師からなる研究チームは,地球型惑星と小惑星帯の形成を一度に説明できる条件を数値シミュレーションによって探し,新しいシナリオを提唱しました.このシミュレーションは,地球型惑星と小惑星の形成を同時に説明するだけではなく,これらの軌道や質量などの観測的特徴もよく再現しました.さらに,月の形成時期や,地球の水の起源となる水を豊富に含んだ微惑星の集積時期など,これまでに行われた様々な研究結果と矛盾しない結果を得ることができました.本研究成果は,Lykawka and Ito, “Terrestrial planet and asteroid belt formation by Jupiter-Saturn chaotic excitation” として, 2023 年 3 月 27 日付で英国の科学専門誌『サイエンティフィック・リポート』に掲載されました.( 2023 年 3 月 29 日公開)

「富岳」を用いた宇宙ニュートリノの数値シミュレーションに成功―2021年ゴードン・ベル賞ファイナリストに選出―

【概要】

 筑波大学計算科学研究センターの吉川耕司 講師らの研究チームは,ブラソフシミュレーションと呼ばれる全く新しい手法を世界で初めて採用し,理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」注1の全システムを用いて宇宙大規模構造におけるニュートリノの運動に関する大規模数値シミュレーションを実行することに成功しました.ブラソフシミュレーションは,従来の計算手法(重力多体 [N体] シミュレーション)に比べて,ノイズのない数値シミュレーションを実行することが可能ですが,計算量や必要なメモリ容量がかなり大きくなることが問題でした.本研究では,革新的な計算アルゴリズムと「富岳」に最適化したコーディング手法と並列化手法を用いて,90%を超える並列化効率を達成し,さらに,富岳の全システムを用いた数値シミュレーションによって,計算領域を約400兆個ものメッシュに分割した世界最大のブラソフシミュレーションを実施することに成功しました.これにより,N体シミュレーションによる過去最大規模のニュートリノの数値シミュレーションと同等規模の数値シミュレーションに要する時間を約10分の1に短縮することができました.

片岡章雅 助教が日本惑星科学会2020年度最優秀研究者賞を受賞

天文シミュレーションプロジェクトの片岡章雅(かたおか・あきまさ)助教が2020年度の日本惑星科学会最優秀研究者賞を受賞しました.片岡助教は,原始惑星系円盤内のダストによる電波偏光放射に対して新たな機構を理論的に提唱し,アルマ望遠鏡による観測とこの理論を組み合わせることで,ダストの大きさが従来考えられていたよりも小さいことを発見した業績が評価されました.

片岡章雅 助教,守屋尭 助教が2020年度日本天文学会研究奨励賞を受賞

天文シミュレーションプロジェクトの片岡章雅(かたおか・あきまさ)助教と守屋尭(もりや・たかし)助教が,2020年度の日本天文学会研究奨励賞を受賞しました.この賞は,優れた研究成果を挙げている35歳以下の若手天文学研究者を日本天文学会が表彰する制度です.2020年度の受賞者は2021年6月に決定・発表され,受賞記念講演が9月15日にオンラインで行われました.

スーパーコンピュータ「富岳」で 太陽の自転の謎、解ける―世界最高解像度計算で太陽の自転分布を世界で初めて再現―

 千葉大学大学院理学研究院の堀田英之 准教授と名古屋大学宇宙地球環境研究所⻑の草野完也 教授は、 理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」による超高解像度計算によって、太陽内部の熱対流・磁場を精密に再現しました。それにより、太陽では赤道が北極・南極(極地方)よりも速く自転するという基本自転構造を、世界で初めて人工的な仮説を用いずに再現することに成功しました。
 本成果では、「富岳」の計算力を用いることで太陽と同じ状況をコンピューター上に再現することが達成できたと考えられます。今後、更なる高解像度計算を引き続き実行していくことで、太陽物理学最大の謎「太陽活動 11 年周期」の解明に近づくことが期待できます。
 本研究成果は、英科学誌『Nature Astronomy』に2021年9月13日付けで発表されました。また、本研究の計算の一部では、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイⅡ」が用いられました。(2021年10月4日 ニュース掲載)

長周期彗星が作るもう一つの黄道面

彗星(すいせい)のうち公転周期が長い長周期彗星は、あらゆる方向からまんべんなくやって来るのではなく、その軌道の向きは特定の二つの面に集中しているようです。この特徴が解析的手法を用いた研究で予測され、さらに数値計算と彗星カタログからも確認されました。今後の太陽系小天体の観測的研究を大きく飛躍させる可能性のある成果です。(2020年9月29日)

スーパーコンピュータ「アテルイ」による研究が日本天文学会2019年度欧文研究報告論文賞を受賞

東北大学の田中雅臣 准教授(論文出版時 国立天文台 理論研究部/CfCA)らによる研究論文が,日本天文学会2019年度欧文研究報告論文賞を受賞しました.
受賞対象となった研究論文は,2017年10月16日付けで『日本天文学会欧文研究報告(Publications of the Astronomical Society of Japan)』に掲載された,Tanaka et al., “Kilonova from post-merger ejecta as an optical and near-Infrared counterpart of GW170817”(合体後放出物質からのキロノバ放射:GW170817の可視光線・近赤外線対応天体)です.この研究では,2つの中性子星の合体により重元素が大量に作られるという現象を,観測とシミュレーションによって初めて明らかにしました.(2020年9月11日 掲載)

庄田宗人研究員が国際天文学連合博士論文賞を受賞

国立天文台 太陽観測科学プロジェクトの庄田宗人(しょうだ むねひと)日本学術振興会 特別研究員が,2019年の「国際天文学連合 博士論文賞」を太陽・太陽圏部門において受賞しました.この賞は,前年に出版された天文学研究の博士論文の中から国際天文学連合(International Astronomical Union,IAU)が優れたものを選び,各部門1名の研究者を表彰するものです.庄田研究員は受賞対象となった論文「減衰不安定とアルフベン波乱流により駆動される高速太陽風」で,2019年に東京大学大学院 理学系研究科において博士号を取得しました.