赤ちゃん星がガスを食べて成長する様子を大規模3次元シミュレーションで世界初観測
大阪大学の髙棹真介助教、京都大学の細川隆史准教授、東北大学の富田賢吾准教授、国立天文台の岩﨑一成助教らの研究グループは、原始星の内部構造と周囲のガス円盤、さらに磁場の影響も考慮した世界初の大規模3次元シミュレーションに成功しました。これにより、原始星がどのように成長するのかについての理解が大きく進展しました。(2025年5月28日掲載)
大阪大学の髙棹真介助教、京都大学の細川隆史准教授、東北大学の富田賢吾准教授、国立天文台の岩﨑一成助教らの研究グループは、原始星の内部構造と周囲のガス円盤、さらに磁場の影響も考慮した世界初の大規模3次元シミュレーションに成功しました。これにより、原始星がどのように成長するのかについての理解が大きく進展しました。(2025年5月28日掲載)
大阪大学大学院理学研究科の髙棹真介助教、久留米大学の國友正信講師、東京大学の鈴木建教授、国立天文台の岩﨑一成助教、東北大学大学院理学研究科の富田賢吾准教授の研究グループは、ガスを食べて成長中の赤ちゃん星、すなわち原始星の大規模シミュレーションを実施することで、原始星がどんどんと回転の勢いを弱めていく新機構(スピンダウン機構)を発見しました。(2025年2月14日 掲載)
イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)コラボレーションおよび多波長の観測グループからなる国際研究チームは,M87銀河の中心部を電波からガンマ線で一斉観測した新たな研究成果を発表しました.今回の観測は,EHTによるブラックホール初撮影から1年後の2018年に行われたものです.一斉観測の結果,M87中心部から強力なガンマ線フレアを捉えることに成功しました.本成果はM87の巨大ブラックホールが約10年ぶりの活動期を迎えたことを示すとともに,超高エネルギー電磁放射の発生メカニズム解明に手がかりを与えるものです.研究成果は欧州の天文学専門誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジクス』に掲載されました.本研究で行われたシミュレーションには国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」が用いられました.(2024年12月13日 掲載)
ブラックホール周囲のガスの渦巻きである超高光度降着円盤が、ブラックホールの自転によって歳差運動することを、一般相対性理論に基づく大規模数値シミュレーションで実証しました。この結果、超高光度降着円盤の周期的な光度変動が、ブラックホールの自転に起因している可能性が示されました。本研究は、Asahina and Ohsuga, "General relativistic radiation-MHD simulations of Precessing Tilted Super-Eddington Disks" として、2024年9月17日にアストロフィジカル・ジャーナル誌に掲載されました。この研究は、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」や国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」などの計算資源を用いて行われたものです。(2024年10月11日 掲載)
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラによる探査によって、カイパーベルトのさらに外側に、我々がまだ知らない天体の集団が存在する可能性が示されました。太陽系の成り立ちを知る上でも重要なこの研究成果は、太陽系外縁部を進むニューホライズンズ探査機とすばる望遠鏡の国際協力によって得られました。
本研究成果は、米国の科学誌『プラネタリー・サイエンス・ジャーナル』に2編の学術論文 Buie et al. 2024 "The New Horizons Extended Mission Target: Arrokoth Search and Discovery" と、Fraser et al. 2024 "Candidate Distant Trans-Neptunian Objects Detected by the New Horizons Subaru TNO Survey" として掲載されます。また、本研究には国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの伊藤孝士 講師が参加しています。(2024年9月5日 掲載)
ブラックホールは降着円盤と呼ばれる回転するガスに取り囲まれており、このガスは複雑な乱流状態にあります。しかし、その性質は長年謎に包まれていました。東北大学学際科学フロンティア研究所(FRIS)の川面洋平助教(現・宇都宮大学データサイエンス経営学部准教授および東北大学大学院理学研究科客員研究員)とFRISの木村成生助教(同大学院理学研究科兼務)は、理化学研究所の「富岳」や国立天文台の「アテルイII」などのスーパーコンピュータを駆使して従来にない極めて高解像度のシミュレーションを実施し、降着円盤の乱流が持つ物理的性質を明らかにしました。特に注目すべきは、大きな渦と小さな渦をつなぐ「慣性領域」において「遅い磁気音波」と呼ばれる縦波が支配的に存在することを発見したことです。この発見により、降着円盤内でなぜ電子よりプラス電荷のイオンの方が効率的に加熱されるのかという観測事実の理論的説明が可能になりました。この研究成果は、2019年4月にブラックホールの影の撮影成功を発表したイベント・ホライズン・テレスコープによる観測データの解釈にも重要な示唆を与えるものです。本研究成果は科学誌Science Advancesに2024年8月28日(米国東部夏時間)付で掲載されました。(2024年8月29日掲載)
太陽系外縁部を進むニュー・ホライズンズ探査機にすばる望遠鏡の広く深い撮像観測が貢献しています。すばる望遠鏡の超広視野カメラで撮られたカイパーベルト天体の探査画像に独自の解析手法を適用した結果、カイパーベルトの領域を広げる可能性のある天体が発見されました。
本研究成果は、日本天文学会欧文研究報告(Publications of the Astronomical Society of Japan;PASJ)に 2024年5月29日付で掲載されました(Yoshida et al. "A deep analysis for New Horizons' KBO search images")。また、本研究には国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの伊藤孝士 講師が参加しています。(2024年6月26日 掲載)
超新星爆発は、銀河の星形成や元素分布に影響を与える重要な現象です。しかし、この超新星爆発の計算をこれまでの銀河形成シミュレーションに組み込むと、計算コストが増大し、最先端の計算機を使用しても、銀河内での超新星爆発の影響を直接的に計算するのは困難でした。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻の平島敬也大学院生、藤井 通子准教授、物理学専攻の森脇可奈助教らによる研究グループは、従来のシミュレーションに替わり深層学習を用いて超新星爆発の広がりを予測する手法を開発しました。今後、この深層学習による予測結果を銀河形成シミュレーションに組み込むことで、銀河形成シミュレーションの精度の向上と高速化が期待されます。この深層学習の教師データの作成に、国立天文台が運用する天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」が用いられました。(2023 年 10 月 23 日掲載)
「惑星の種」である微惑星注1は、原始惑星系円盤注2において固体微粒子同士が付着による衝突合体を繰り返すことで形成されたと考えられています。しかし、どのような条件の下で 2 つの微粒子の塊が衝突合体するのかという重要な問題が未解明のままでした。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)ヤング・リサーチ・フェローの荒川 創太氏らは、国立天文台の「計算サーバ」※を用い、惑星の材料物質である固体微粒子の塊について、その衝突挙動を数値シミュレーションによって調べました。様々な大きさの塊について数値シミュレーションを実施した結果、塊が大きい場合に 2 つの塊が衝突合体する確率が低下することを明らかにしました。本研究の結果は、微粒子の塊が大きくなるにつれて衝突合体しにくくなるため、微粒子同士の衝突合体による成長のみで微惑星を形成することは困難であることを示唆しています。これは惑星形成プロセスを理解する上で重要な知見となります。
本成果は、S. Arakawa et al. "Size Dependence of the Bouncing Barrier in Protoplanetary Dust Growth" として、「The Astrophysical Journal Letters」に 7 月 6 日付け(日本時間)で掲載されました。(2023 年 7 月 6 日 記事公開)
巨大な爆発現象である「太陽フレア」は、「磁場のねじれ(磁気ヘリシティ)」が蓄積することで発生しますが、これまでどのように磁気ヘリシティが蓄えられるのかは分かっていませんでした。実際に、ねじれを持たない磁場が太陽内部に存在したとても、それが元になって太陽フレアを起こすことはないだろうと考えられてきました。
太陽内部は望遠鏡で観測することができませんが、スーパーコンピュータを使ったシミュレーションであれば内部のようすを探ることができます。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の鳥海 森准教授、名古屋大学の堀田英之教授、草野完也教授からなる研究チームは、シミュレーションを用いることで、磁気ヘリシティを供給する過程に太陽内部の熱対流がこれまで考えられてきた以上に大きな影響を与えていることを突き止めました。スーパーコンピュータ「富岳」(理化学研究所)および「アテルイⅡ」(国立天文台)を用いた大規模数値シミュレーションにより、太陽の深部から磁力線の「たば」(磁束管)が浮上し、黒点を形成する様子を再現しました。その際、磁束管に与えるねじれの強さを人工的に変化させることにより、磁束浮上・黒点形成に伴って、太陽コロナに磁気ヘリシティが供給されるプロセスの違いを調査しました。その結果、磁束管のねじれがゼロの場合でも、周囲の対流が磁束をよじることで黒点が回転運動し、太陽コロナに磁気ヘリシティが供給されることがわかりました。熱対流によるねじれの供給量は、小規模な太陽フレアを発生しうるほどに達しました。
本研究の結果は、磁気ヘリシティを供給し太陽フレアに必要なエネルギーを蓄える上で、磁束管自体の持つねじれだけではなく、熱対流が磁束管をよじる効果も重要な役割を果たしている可能性を示しており、これまでの認識を改める成果と言えます。本成果は英国の科学雑誌Natureの姉妹誌である『Scientific Reports』誌に 2023 年 6 月 2 日付けで掲載されました。(2023 年 6 月 23 日、本記事公開)