明かされつつある太陽系外縁の構造―すばる望遠鏡とニューホライズンズの20年の挑戦―

概要

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラによる探査によって、カイパーベルトのさらに外側に、我々がまだ知らない天体の集団が存在する可能性が示されました。太陽系の成り立ちを知る上でも重要なこの研究成果は、太陽系外縁部を進むニューホライズンズ探査機とすばる望遠鏡の国際協力によって得られました。
本研究成果は、米国の科学誌『プラネタリー・サイエンス・ジャーナル』に2編の学術論文 Buie et al. 2024 "The New Horizons Extended Mission Target: Arrokoth Search and Discovery" と、Fraser et al. 2024 "Candidate Distant Trans-Neptunian Objects Detected by the New Horizons Subaru TNO Survey" として掲載されます。また、本研究には国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの伊藤孝士 講師が参加しています。研究の詳細はハワイ観測所ウェブサイトをご覧ください。(2024年9月5日 掲載)



図1:すばる望遠鏡(左)とニューホライズンズ探査機(右)。(クレジット:国立天文台/Southwest Research Institute)
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図2:HSCが発見したカイパーベルト天体の距離の分布。横軸は太陽から天体までの距離で、地球-太陽間の距離(1天文単位;au)を単位としています。縦軸は天体の個数です。(クレジット:Wesley Fraser)
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研究者のコメント

すばる望遠鏡はニュー・ホライズンズ探査機の打ち上げ前から、探査を支援するための地上観測に協力して来ました。私がそこに参加したのは2020年春です。この数年の集中的な観測では、太陽系の最外縁部において約240個もの小天体が発見されました。観測とデータ解析の作業は今後も続くので、将来はもっと多くの小天体が見つかるでしょう。こうした発見は太陽系が従来の予想よりもずっと広いことを私達に教えてくれましたが、同時に、太陽系の成立と進化に関する様々な研究へも道を拓きます。私自身も一連の観測活動に携わるとともに、そこで得られた結果を説明できる理論モデルを作ろうとしています。そこではCfCAが運用する共同利用計算機の出番もあるでしょう。ニュー・ホライズンズ探査計画の一員であることを光栄に感じつつ、そのことに恥じない研究成果を出し続けなければならないと、身の引き締まる思いです。
(国立天文台天文シミュレーションプロジェクト 伊藤孝士 講師)

論文

タイトル:"The New Horizons Extended Mission Target: Arrokoth Search and Discovery"
著者:Brie et al.
掲載誌:Planetary Science Journal
DOI:10.3847/PSJ/ad676d

タイトル:"Candidate Distant Trans-Neptunian Objects Detected by the New Horizons Subaru TNO Survey"
著者:Fraser et al.
掲載誌:Planetary Science Journal
DOI:

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関連リンク

国立天文台:明かされつつある太陽系外縁の構造―すばる望遠鏡とニューホライズンズの20年の挑戦―
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