全地球史解読ニュースレター No. 8

          Jan. 5, 1998

          発行 全地球史解読事務局
          113 文京区弥生1-1-1 東京大学地震研究所 瀬野徹三 
          tel 03-3812-2111 ex 5747   fax 03-5802-2874
          e-mail  seno@eri.u-tokyo.ac.jp

−目次−


●Research Activities

○研究報告 地球軌道の安定性とその必然性

              国立天文台 天文学データ解析計算センター 伊藤孝士

地球軌道の変動は自転軸の運動と連動して大気上端に入射する日射量変動の直接要因と なり、数万年から数十万年の氷期間氷期サイクルという気候変動の駆動源であると言わ れて来た(Croll, 1875; Milankovitch, 1941; Hays et al., 1976, Berger et al.,1989; Ito et al., 1995)。軌道要素の変動を解明するとは、即ち重力に支配された惑星の運動を追いかけ るということである。この領域は数世紀にわたり天文学のもっとも中心的な課題であり 続け、非常に多くの研究が蓄積されてきた。日射量変動は、地球表層の気候変動に対す る外部的要因としてはその原因と変化が極めて精密に計算できるものであるという特徴 を持つ。これは、惑星の運動が質点と剛体の力学で良く近似されるいわゆるハミルトン 系であることに起因している。全地球史解読計画に於いては、日射量変動のこうした性 質を利用して太古代や原生代と言った全地球史的過去での物理的地球環境の復元を試み ようとしている。しかしながら、現在の地球軌道要素の準周期的な変動が同様に全地球 史的な時間スケールでもやはり準周期的に保たれるかどうかについては今のところ何ら の情報も得られていない。たかが九個や十個の質点の古典的重力相互作用による運動に 関してすら、全地球史46億年の壁は厚いのである。私達はこうした問題に新しい数値計 算法と伝統的な解析的手法を用いて挑んでおり、全地球史解読計画に於ける相対年代測 定用時計の役割を果たそうと目論んで来た。本稿では惑星運動の研究の概要と現状、今 後の課題などについて私達の研究の結果を交えながら概観する。

惑星運動の特徴

万有引力に支配された天体の運動方程式はma=fそのものの簡単な形をしている。しかし 一般に、N個の天体が相互作用する場合の解析的な解は存在しない。わずかにN=2、す なち重力二体問題の場合にのみ後述するような二次曲線という解が知られているだけで ある。惑星の軌道は楕円であるとしばしば表現されるが、これも近似的には楕円的であ るというだけの話であり、厳密には軌道は互いの重力作用によって常に揺れ動いており、 解析的な式で表現できるものではない。だが惑星の運動には、太陽重力の影響が他の力 に比べて圧倒的に大きいという特徴がある。太陽重力の大きさ1とした場合の惑星間重 力相互作用の大きさは大雑把に言って10^-3(^は上付を意味する)程度である。このこ とより、惑星の運動は基本的には太陽と自分自身との重力二体問題であり、それに対す る微小な摂動として惑星間の重力相互作用(以後は摂動力と呼ぶ)が働いているとい う構図を描くことができる。

さて前述のように、天体が二個の場合、つまり重力二体問題には運動方程式の解析的な 解──太陽を焦点のひとつとした二次曲線──が存在する(この三つのうちどれになる かは位置と速度の初期条件による)。もしも宇宙に太陽と地球だけしか存在しなければ、 地球は太陽を焦点のひとつとする楕円軌道上を永遠に周回し続ける。軌道自体も慣性系 に対して固定され、動くことはない。楕円軌道に代表されるような二次曲線を解とする 天体の運動はケプラー運動と呼ばれる。太陽の重力が支配的であるということは、惑星 の運動はケプラー運動に非常に近く、惑星間の相互重力が摂動としてわずかに軌道を乱 すように働いているということである。

ケプラー運動に近い天体の運動を議論する場合には、直交座標よりも軌道六要素と呼ば れる変数(a,e,I,ω,Ω,l; それぞれ軌道半長径、離心率、軌道傾斜角、近日点引数、昇交点 黄経、平均近点離角)を用いた方がはるかに便利である。重力二体問題すなわちケプラー 運動の場合には、平均近点離角l以外の五要素(a,e,I,ω,Ω)は時刻に対して一定であ り、l のみが時刻と共に変動する。重力二体問題が『縮退している』と言われる所以である。 この性質と、惑星運動がケプラー運動に近いという事実を思い起こすと、軌道要素の時 間変化を追うには必然的に以下のような逐次近似の方法を採用したくなることがわか る。 ケプラー運動を引き起こす太陽重力に比べて摂動力は非常に小さいので、級数の収束が 速いからである(Brouwer and Clemence 1961)。

ある物理量xの時間変化を記述する微分方程式f(x) = 0 があり、解x_0 (_は下付を意味す る)は既知であるとする。x_0は惑星運動に於いてはケプラー運動に相当する。この系 に摂動εg(x)が加わってf (x) + εg(x) = 0 となった場合の解を逐次近似で求めるのが摂動 論である。このような場合には、xをパラメータεの羃乗でx = x_0 + εx_1 + ε^2x_2 + ε^3x_3 + のように展開し、微分方程 式f(x) + εg(x) = 0 に代入してεの同次項を比較 するという手法を採る。例としてf(x) = x" + x, g(x) = -x^2を考えると、同次項の比較結 果は以下のようになる(x"はxの二階時間微分を意味する)。

O(ε^0) :
x_0"+ x_0 = 0→ 0次解x_0 → O(ε^1) の式へ代入
O(ε^1) :
x_1" + x_1 = -x_0^2 → 1次解x_1 → O(ε^2) の式へ代入
O(ε^2) :
x_2" + x_2 = -2x_0x_1 → 2次解x_2 → O(ε^3) の式へ代入 O(ε^3) : …

以下同様にして逐次近似を繰り返せば、n次の近似解x_nが求められるが,近似の次数が 上がるに従って計算量は鼠算的に増大する。なお、実際の問題ではパラメータε自体も 時間変化する場合が普通なので、上記の手続きはいわゆる定数変化法に相当する。

惑星科学や天文学など長い時間スケールの現象を対象とする分野で問題になるのは、ケ プラー運動では縮退して動かない軌道要素a,e,Iらのゆっくりとした変動であり、公転周 期に起因した(従って時刻に直結した)短周期変動ではない。このことを考慮し、あら かじめ公転周期に関して平均化した運動方程式を解いて解の長周期の振舞い(永年変動) のみを抽出しようとする永年摂動と呼ばれる方法がある。惑星の運動を公転周期に関し て平均化してから解くとは、物理的には惑星を質点ではなく角運動量付きのリングとし て取り扱うことに相当する。具体的には、摂動関数の永年項(公転周期に関して平均化 して残った項)だけについての運動方程式を解くことになる。詳細は省略するが、質点 の運動方程式から出発し、永年摂動の方法を用いて或る種の変数変換を行うことで、惑 星の軌道要素変動は線形振動の重ね合わせとして記述することができる。摂動論の方法 は数式をいじくる手間さえ厭わなければ何次まででも精度を高めることができるが、い ずれにせよこの方法による結果の意味するところは、惑星運動は長い期間(それがどの 程度であるかはまた別の問題である)にわたって安定であり、軌道要素は準周期的な変 動を延々と繰り返すということである。例えばLaskar (1988) の一連の研究は、二次の永 年摂動に於いて離心率と軌道傾斜角の五乗までを考慮した方程式を作り、それを大規模 な数式処理システムを用いて解くという精密なものである。この結果によれば、地球 の軌道は±100億年以上にわたり現状と同様に安定で、離心率も小さいままに保たれる という(Laskar 1996)。

数値積分

摂動論に代表される解析的な手法は前世紀以前から研究され続けて来たものである。こ れに対し、近年の計算機技術の急速な発達に後押しされ、運動方程式を直接数値積分す る方法が大いに発展して来た。数値積分は摂動論のように平均化や級数打ち切りなどの 操作をしないので、精密な数値積分は摂動論の確からしさを検証する道具ともなり得る。 数値積分の具体的手法は多岐に渡るが、惑星運動の特徴として(1)運動は非常に滑らか であり、天体同士の接近遭遇がなければ急激な変動はない、(2)系のサイズ(Nの大きさ) が小さいためにベクトル化や並列化にはあまり馴染まない、と言った特徴がある。この ため、予測子法(多段法)やルンゲ・クッタ法などの多項式近似タイプ(Kinoshita and Nakai, 1996)、高精度が要求される場合には補外法(Ito and Fukushima, 1997) もしばしば 用いられる。また最近、惑星運動がハミルトン系として十分良く近似できるということ に着目したシンプレクティク数値積分法という新しい解法が現れ、各種の改良が重ねら れて惑星運動数値解法に於ける主流を占めつつある(Yoshida, 1993)。私達はこのシンプ レクティク数値積分法を用い、惑星の運動を過去と未来の数億年間にわたって数値的に 追ってみた(Ito et al. 1996)。その結果はLaskarらの永年摂動論と良い一致を示している。 即ちこの程度の期間では惑星の軌道は準周期的な運動を繰り返すばかりであり、不安定 や衝突などはまったく生じていない。後に述べるように、数学的側面から見た惑星の運 動はカオスの様相を呈しており、カオスの特徴的時間スケールであるリャプーノフ (Lyapunov)時間はわずか数百万年である。それにも関わらず、地球を含めた現在の惑星 系の運動は極めて、非常に、信じ難いほど安定である。数億年という積分期間を短いと 感じる読者もいるであろうが、これはマシンの能力と計算時間の制約に依るものである。 計算量を減らし、計算時間を短縮するために、私達は外惑星(木星から冥王星まで)の みに対象を絞った数値実験も行ってみた。外惑星系の軌道進化について400億年以上の 数値積分を行ってみたところ、目に付くような軌道の変化は予想通りほとんど発生しな かった。少なくとも現在の惑星の軌道は大変に安定で、不安定や衝突・散乱にはほど遠 いコンフィグレーションに居ることがわかる。

惑星系の安定性とカオス

前述したように、重力二体問題=ケプラー運動は無限長の時間で安定なので、これに近 い運動状況を呈する惑星系も非常に長い期間安定であると予想される。ここでは『安 定』 を『惑星同士の接近遭遇が生じない』という意味に定義する。しかし近年、こうした常 識を揺るがす事実が数値実験によってわかりつつある。すなわち、惑星の運動はいずれ もカオス的であり、カオスの特徴的時間スケールであるリャプーノフ指数は数百万年 (内惑星系の場合)と非常に短いということである(Sussman and Wisdom, 1992)。カオス とは即ち系が鋭敏な初期値依存性を持つということだから、数値計算によって得られた 惑星系の安定性が現実のものなのか、本当に不安定は生じないのかどうかなどの疑問に ついては、初期値空間を十分に探索した後でなければ結論を出すことはできないという ことになる。計算機の能力限界や計算誤差の蓄積などの問題のため、現在の数値計算は まだまだ初期値空間のごく一部を覗き見るに留まっており、この意味で惑星系が10^9年 の時間スケールで安定であるということに対する保証はどこにもない。いくつかの長期 の数値積分の結果はリャプーノフ指数を遥かに超えた期間にわたる安定性を示しており (Kinoshita and Nakai, 1995 な ど)、数学的に定義された『カオス』と物理的に定義された 『安定性』との対応が明確ではないことが現れている。けれども、現に惑星系がカオス である以上、いつかは準周期的な振舞いをやめ、いわゆるカオス的な大変動を起こさな いと断言することはできない。それがカオスの本質である。この意味で数値実験が示す ように、惑星系は例えば地球史的時間スケール(10^9年)では安定であるかもしれないが、 その間にも極めてゆっくりとした速度でカオス的な拡散を続け、大変に長い時間( 10^10年とも10^11年とも言われている)の後には自ずから不安定を起こして瓦解してし まうのかもしれない。もちろんそれより早く太陽の寿命が尽きてしまうだろうから、実 際的な意味での惑星系の安定性は保たれるであろう。なお、天体軌道のカオス的拡散に 関しては、惑星に比べて安定性の強度が低い小惑星についての研究が行われ始めている (Morbidelli 1997)。

安定性は必然か?

仮に惑星系がかほど安定であることが事実だとすれば、当然の如く次なる疑問が発生す る。これほど安定な惑星系は如何にして作られたのか?現在の惑星配置の必然性はどれ ほどのものか?惑星配置の必然性を検分するには、仮想的な惑星系を考えてその軌道進 化や安定性を片っ端から調べて行くのが手っ取り早い。惑星の質量を重くしたり、間隔 をせばめたり、個数を増やしたりして不安定性を加速した系で数値実験を行い、現実の 系に対してスケーリングを当てはめようとするのである。代表的な例はChambers et al. (1996) で、等質量の惑星を二次元平面内で等間隔で並べ、不安定が生じるまでの時間 を計測したものである。面白いことに、質量があまり大きくない(10^-5太陽質量程度) の惑星を考えた場合には、不安定性に至るまでの時間は惑星の個数や質量にはあまり依 らず、間隔のみに依存する。しかも惑星の間隔とlog[不安定までの時間]にはきれいな線 型の関係が現れている。私達も彼等の数値実験の追試を行い、初期の惑星配置の違いに よって一桁くらいの幅は現れるものの、この線型の関係が成立することを確かめた。 Hill半径で規格化した現在の惑星の間隔は地球型惑星領域で25から60以上、外惑星領域 で10から20であり、木星型惑星の領域に比べると地球型惑星の領域はかなり疎であるこ とがわかる。Chambersらの実験通りに安定性と間隔の間に(対数とは言え)比例関係が成 り立つとすれば、地球型惑星領域は木星型惑星領域に比べて遥かに長い間安定である可 能性があるし、より定量的な数値実験とスケーリングによって具体的な安定性の時間ス ケールを導くこともできるかもしれない。もちろん現実の惑星系は等質量でも等間隔で もないので、数値実験には工夫が必要である。然るに、物事が物理的に進化するのはい わゆる「不安定」〜衝突などはその好例である〜が生じた場合である。現実の惑星系の 進化は極めてゆっくりで、不安定はなかなか生じないかもしれないが、その場合には仮 想的な系を考えて人為的に不安定を発生させれば良い。実に単純な話ではあるが、伝統 的な天体力学の枠組の中ではこうした基本的な発想の転換はなかなか為されて来なかっ た。計算機の進歩が様々な数値実験を容易にした今こそ、こうした新しい発想と伝統的 な技法に立脚した研究が待たれているのである。

安定な惑星系の必然性に対して答を出してくれる可能性のもうひとつは、惑星集積過程 の研究である。近年の観測技術の飛躍的発展により、従来は理論的研究の産物に過ぎな かった原始惑星系円盤や太陽系以外での惑星系が次々と発見される時代になっている。 とりわけ系外惑星の発見は、私達の太陽系の普遍性と特殊性を明らかにできる段階がす ぐそこまで近づいていることを予感させるものである。こうした状況のもと、微惑星の 集積を扱う惑星集積過程に関しては、強力な専用計算機を用いた重力多体問題の大規模 な数値計算が東大駒場のグループらにより活発に行われており、画期的な発見が相次い でいる。今の惑星系がここまで安定なのはひとつには惑星の間隔が前述のようにかなり 広く空いていることに起因していると思われる。従って、惑星集積の段階で何故このよ うに大きな間隔を持って惑星が形成されたのかを問い詰めることにより、惑星系の安定 性の起源に迫ることができると考えられる。専用計算機による惑星集積過程シミュレー ションの最新の結果(Kokubo and Ida 1996, 1997)は遂に惑星集積の最終段階にまで到達し、 地球領域には現在の惑星の十数分の一の質量の原始惑星が十数個並ぶという状況を再現 した。私達はこの結果を受け、木星型惑星からの摂動によって地球領域の原始惑星が不 安定を起こし、衝突・散乱を経由して現在の個数と間隔に落ち着いたのではないかと考 え、これをモデル化した数値計算を進めているところである。

おわりに

太古代の堆積物に刻まれた縞模様は日射量変動なのであろうか?そうだとしたらその周 期は今とどう違っていたのだろうか?私達の素朴な疑問は今や惑星形成の必然性という 大袈裟な問いにまで発展してしまったが、これは即ち、太古代の堆積物の縞模様が惑星 系の進化の様子を精密に記録しているということの証左に他ならない。重点領域研究と しての全地球史解読計画は本年度で終了するが、この三年間で新たに勝ち取った描像を 礎にして私達が真の意味での全地球史解読的意識に目覚め、行動を開始するのはまさに 今日からである。

参考文献

[目次へ]

ナミビア調査報告

                     京都大学理学系研究科 東條文治

7月21日から8月14日にかけて、アフリカ南西部に位置するナミビアという国に、 岐阜大の川上先生、都立大学の吉岡さん、名古屋大学の岡庭さんと私の4人で調査にいっ てきました。今回の調査のメインは、Carbonateの縞々のサンプリングでした。 Late Proterozoic の頃に数回氷河時代が繰り返したという証拠となる堆積物( tillite あるい はmixtite、diamixtite と呼ばれている)が世界各地にあるのですが、その氷河堆積物を 覆うようにCap Carbonateと呼ばれる特徴的な炭酸塩岩が溜まっていることが知られてい ます。ナミビアにはこれらのCap Carbonateの中で最もきれいな縞々があるとのことで、 これをサンプリングしようということになったわけです。 このような石灰岩は「異常石灰岩」として最近注目を浴びています。「異常石灰岩」と は無機的な炭酸塩の沈殿によって細かい縞模様が形成されている石灰岩のことで、今ま ではストロマトライトと区別されてきませんでした。この「異常石灰岩」の形成メカニ ズムと海洋環境の関係などを明らかにし、ストロマトライトも含めて石灰岩の構造と形 成環境について再検討することが、これからのPreCambrianの研究には欠かせないもの になっているのです。 そういった面以外でも、このナミビアの縞々には地球史上の重要な情報がいくつも含ま れています。そのなかでは特に氷河時代と生物活動の関係について注目を集めていてい ます。PC/C境界の多細胞生物の爆発的発生は氷河時代の終わりとともに起こります。 このPC/C境界の直前のLate Proterozoicに起こった数回の氷河時代が、どのようなスピー ドで温暖な時代に移り変わっていったのかを縞々から読むことができれば、地球表層環 境について、多細胞生物の発生について、大きな制約条件が与えられると考えられます。 研究者のなかには炭素同位体比の分析をもとに、停滞していた海洋の循環が活発になっ て、深層から有機物にとんだ海水の湧き出し(Over Turn)があり、非常に急速にこの 石灰岩が堆積したと言う人もいます。 そこで、氷河時代から温暖な時代への地球システムの振る舞いについての鍵を握るCap Carbonateを連続サンプリングして、元素マッピングするという、新手法で今までの PreCambrianの研究が見落としてきた情報を読みだそうというわけです。

今回の調査には、ハーバード大学のポール・ホフマン教授の全面的なバックアップがあ り、地質図、柱状図や露頭写真などが事前に手に入り、サンプリング計画を立てる上で 大変役立ちました。さらに、岡庭さんがカナダでの学会の帰りにわざわざハーバード大 学によってCap Carbonateの試料の一部や地図をホフマンからもらってきてくれたので、 事前に試料を予察的に分析することができました。送られてきたサンプリングポイント の露頭写真から地層がほぼ垂直に立っていることがわかったので、エンジンカッターで 水平に連続的に地層を切り取ろうということになりました。そのためには、エンジンカッ ターを支える足場や露頭の表面の凹凸に柔軟に対応できるステージが必要です。その設 計と製作には名古屋大学の熊澤先生、高野先生をはじめ技官の方々にお世話になりまし た。出発前に国内で行ったテストでは、雨天の中で露頭状態が悪かったこともあって、 非常に苦労しました。

大量の装備とともに7月21日の朝、日本を発って、現地時間の翌日の朝にはナミビア に着きました。空港ではホフマンの出迎えを受けました。現地に着いてからはサンプリ ングポイント周辺でのキャンプ生活の準備や、レンタカーの確保、保険の加入、岩石資 料のサンプリング許可、国外持ち出し許可の手続きに走り回りました。サンプリング資 材やキャンプ用品を積んで悪路を進める種類の車が少なく、レンタカーの確保では現地 のレンタカー店で交渉を重ねるなど、調査のはじめから緊張の連続でしたが、首都ウィ ントホックですることはすべて2日間で終え、3日目早朝にはサンプリングポイントへ と出発することができました。サンプリングポイントまでの道のりは、広大な風景にまっ すぐな道が延々と続くという感動的なもので、スケールの大きさに圧倒されてしまいま した。しかし、サンプリングポイントを間近にしてレンタカーのタイヤがパンクし、ス ペアタイヤも空気が漏れているという事態に陥りました。目的地を目前にして、1晩ブッ シュキャンプで過ごし、翌日ホフマンの車のスペアタイヤと交換して、目的地へたどり 着きました。とにかく、レンタカーのタイヤの状態が非常に悪く、今回の調査全体で合 計4本のパンクにあい、ホフマンのサポートを受けながら何とか全行程を走りました。 サンプリングサイトまでは車が入れず、露頭から2kmのところにキャンプをはって、 そこから露頭までは歩かなければなりません。サンプリングサイトにやっとたどり着い たときには、炎天下の中歩き続けてやっとたどり着いたという感動と、あまりに見事な 縞々の露頭に対する感動とが合わさり、お宝発見状態といった感じで露頭を触りまくり 叩きまくりました。露頭面がほぼ垂直でエンジンカッターで切りやすく、縞の状態もよ いので、当初の予定どおりホフマンの提案してくれた露頭でサンプリングすることにな りました。

サンプリングは国内での試し切りとは打って変わって、順調に進みました。露頭面がほ とんど平らなので、エンジンカッターを支える足場を組むと一気に2m程度が連続にサ ンプリングできるのです。また、川上さんを始め、岡庭さん、吉岡さんはカナダなどで の連続サンプリングの経験を生かし的確な手順で作業を進めていくので、あっという間 に、垂直に立った地層の縦縞々に、エンジンカッターの切断面の横縞が刻まれていきま した。もちろん露頭の傾斜が緩やかだったり、侵食に弱くへこんでいるところもあり、 足場を組めずに手持ちでエンジンカッターを使わざるを得ないところもありましたが、 岡庭さんの大活躍でほぼ5日で、露頭15m分の2本の連続試料をサンプリングできま した。10日のサンプリング日程を組んでいたので、残った時間を周辺の地質観察、氷 河堆積物のサンプリング、黒色石灰岩のサンプリング、サンプリングした層準の他の露 頭での観察と縞の対比、PC/C境界直前(約6億年前)の氷河堆積物を覆うもう一つの Cap Carbonateの観察、などにあて、中身の濃い、充実した調査にすることができました 。

この予定外の調査は今後の研究に大いに役立つものになると思います。 慣れないキャンプ生活はとてもこたえましたが、この試料が可能にする研究の意義を考 えると、はるばる日本からキャンプをはって、パンクに泣きながらサンプリングにいっ ただけのことはあると思います。ナミビアは治安もよく、特別な病気の心配もなく、人々 も親切でとても好感が持てました。とにかく、ホフマンとその学生のペッパーさんの協 力には感謝の言葉も見つかりません。サンプリングした試料を丹念に分析し、期待を上 回る研究成果で彼らを喜ばせたいと思います。

[目次へ]

「秋の学校」報告

                      京都大学理学系研究科 東條文治

全地球史解読「秋の学校」は「専門的な知識がなくても幅広い分野の研究の基礎を身に つけられる学校」として、全地球史解読に参加する若手を中心に企画、運営され、60 名近い参加者を得ることができました。

「秋の学校」が目指したものは、それぞれの分野では既知を前提とされるような基礎的 な知識もできるだけフォローし、近年幅広い分野の成果が示しつつあるグローバルな地 球観という視点の重要性と面白さを、みんなが実感できる「学校」です。

さらに、「物質循環」というテーマを設け、それぞれの分野で第一線の研究をしておら れる若手の方を招き、「秋の学校」の趣旨に沿った、わかりやすい講演をしていただき ました。それぞれの講演が、地球科学のトピックスとして興味深いものであったことは もちろんのこと、さまざまな時間スケール、空間スケールでの物質循環を学ぶことで、 地球システムの奥行きを感じる、楽しいものとなりました。

また、巡検は草津白根の火山地質と群馬鉄山のバイオマットの2本立てでした。草津白 根の巡検は、火砕流や溶岩流、降下火山灰などのレクチャーを含めた巡検案内が非常に わかりやすく、実際の野外観察も火砕流の流れたテーブル状地形から、降下した火山灰 の薄い層まで、色々なスケールの観察があり楽しめました。そして、群馬鉄山の巡検は、 直接目では細かい構造を観察しにくいバイオマットがテーマということもあって、事前 には初心者向きの巡検としては適切ではないかもしれないという声もありましたが、実 際には、赤や緑、白といった、色とりどりのバイオマットが分布していたり、堀り残さ れた鉄を含む堆積岩には層状の構造が生々しく残されているなど、非常に視覚にうった える楽しい巡検となりました。また、バイオマットを作っているバクテリアの種類をそ の場で見分ける最新の装置なども披露されました。参加者から全地球史解読「秋の学校」 に予想以上の好評をいただいたことは、実行委員全員がうれしく思っています。今回の 反省点を踏まえて、今後の全地球史解読「ちょー若手の会」の活動につなげていきたい と思います。


全地球史解読「秋の学校」プログラム

10月24日(金)
12:30‐13:30 受付
13:30‐14:00 基調講演: 東條文治
14:00‐15:50「人類による地球環境の変化」小埜恒夫
16:00‐17:50「物質循環と地球環境の変化〜モデリングによるアプローチ」田辺英一
18:00‐19:00 夕食
19:00‐	懇親会

10月25日(土)
7:00‐ 7:30 朝食
8:00‐ 9:50「火成作用からみた地球内部のダイナミクス」岩森光
10:00‐11:50「化学的核マントル相互作用」奥地拓生
12:00‐13:00 昼食
13:30‐14:00 巡検案内「草津白根山の火山地形と地質」小屋口剛博
14:00‐15:50「Project"KAME"〜データからみる 地球環境」坂元尚美
16:00‐17:00 総合討論
17:00‐20:00 ポスターセッション
17:30‐18:30 夕食

10月26日(日)
7:00‐ 7:30 朝食
8:30‐	草津白根山巡検
13:00頃	解散予定
13:00‐	オプショナル・ツアー群馬鉄山巡検
17:30頃	解散予定

当日のプログラムの変更
10月24日(金)
基調講演の開始:13:30 → 13:45
10月25日(土)
13:00−13:30 小埜さんの補足講演

○秋の学校感想文 その1

                            高知大 熱田真一

先ず、私は“地質”を専攻している事もあり、最初戸惑いました。あと、地方大学で参 加ということもあり、知っている人がいなかったので比較的とけ込むのに時間がかかっ たと思います。

今回、「秋の学校」の参加しようと思ったのは、私の研究に関係する講演があったから です。私は、岩石学を専攻し、特に「花崗岩マグマの成因」について研究しています。 そこで“物質循環”とくに元素の挙動について勉強したかったからです。

「秋の学校」では、様々な分野で活躍されている方々の講演を聞くことができとても良 い機会だったと思います。参加の際、岩森氏の講演と小屋口氏の巡検が楽しみでした。 特に、岩森氏の発表は、従来の私の視点とは違った発表でびっくりしました。

次に全体の印象ですが坂元尚美氏の講演でもありましたように、いわゆる博学的アプロー チと物理的アプローチのギャップに、先ず、戸惑いました。しかし、全地球史解読「秋 の学校」ちょー若手の会 の主旨である博学的アプローチと物理的アプローチの融合と 言うものが、自分自身が以前から感じていたギャップに似ていたので、新たに励みにな りました。 また、自分の研究以外で、他の人はどういう研究をしているのかと以前から思っていた のでいい刺激に成りました。

最後に今回、全地球史解読「秋の学校」に初めて参加して、参加されていた方々が、大 変気さくで、 また私のいろんな質問にも答えていただき、自分自身にとって大変プラスに成りまし た。 また、参加している「ちょー若手の会」の方々が、同世代とあっていい刺激に成りまし た。今回、いわゆる物理的アプローチの方々が多く参加されていたので、今度は、いわ ゆる博学的アプローチの人を連れて行きたいな、と思いました。

上手く言えませんが、とても楽しかったです。また機会があったら参加したいです。

○秋の学校感想文 その2

                           広島大 川田佳史

地球科学といってもいろんなことを扱っていて、自分の専門外のことはまるで分からな いと言うのが正直なところ。だから普段あまりなじみのないことについての話が聞ける のはいいことだと思います。地球科学を研究する同世代の人達と話ができるというのも いいいことですね。(でも学部学生の人は少なかったですね)そうすることによって視野 を広げ、新しいものに乗り出してもいいし、今までの研究に違った意味付けをしてもい いし、いろんなところにプラスになります。

今回物質循環をテーマに、地球の外から中まで様々な対象について講演がありました。 地球の諸現象というのは物質やエネルギーの循環に帰着されるのだから、それを扱うこ とによって地球のダイナミックな姿が描かれる、、、というのが主題だと思います。例 えば、火山活動が地球の深部と関わっているなら全体を視野に入れつつ考えなければな らない、、、といったように。こういう発想は地質学の世界にはあまりなじみがないし、 今まで手が付けられなかった事柄だったはずです。それは地球物理でも同じで、マント ルだ核だといってても個別に扱っていたのでは"木を見て森を見ず"ですね。

今回のテーマは物質循環ということで、物理サイドの話が多かったせいか地質学の人が 少ないのが印象的でした。ものを一番見ているのは地質学の人だと思うし、地質学のも のの見方というのは一考の余地があると思います。地球科学の現状は地質学と地球物理 学のギャップがものすごく大きいというものだから、それを何とかしよう、というのが この全地球史のようなものの役割じゃないかと僕は思います。そういう点では、これは 絶好の機会であり大切にしたいと思います。


○全地球史解読「秋の学校」・アンケート結果

・25人回答

問い:この「秋の学校」をどのようにして知りましたか?(重複回答あり)

答え:

  1. 先生・友人・知人から 13人
  2. メーリングリスト 7人
  3. ポスター・ちらし 5人
その他「講演依頼により。」 「実行委員の方に聴いた。」 「企画者の一人だった。」

問い: 参加した動機は何ですか? 22人回答

答え: 「卒論研究で縞々、全地球史関係の研究をするから。」 「プログラムを見て、火成活動と地球内部の話に興味があったので。」 「物質循環に興味があったから。」 「面白そうだから+全地球史とは何ぞやと思ったから。」 「企画者の一人だったから。」 「勉強。」 「グローバルなお話を聞きたかったから。」 「メールを読んだから。」 「リフレッシュ。」 「情報収集、仲間づくり。」 「面白そうだったから。いろいろな話が聞けそうだった。」 「地球科学の話をしばらくしていない。感覚がマヒしないように。」 「勉強・自分の研究の発展の糸口探し。」 「春の学校のときより、もう少しわかるようがんばってみたかった。自分の研究に関係する知識を増やしたかった。」 「若者達に熱い想いを語る。」 「地球内部の様々な分野の話が聞きたかった。」 「テーマが面白かった。」 「地球について語り合うため。」 「何となく、何か役に立つ話が聞けるといいなと思いました。」 「物質循環というものを勉強したかったから。」 「後学の為、将来設計の参考に。」 「Organizerにさそわれた。」

問い: 講演について(講演数)

答え:

  1. 多い 1人
  2. ちょうど良い 23人
  3. 少ない 0人
その他「もう少し休みの時間が多いと良い。」

問い: 講演について(講演時間)

答え:

  1. 長い 7人
  2. ちょうど良い 16人
  3. 短い 2人

問い: 講演について(レベル)

答え:

  1. 高すぎる 9人
  2. ちょうど良い 14人
  3. 低すぎる 0人
その他 「はじめての分野は難しかった。」 「ちょっと高い。」

問い: 講演について(内容)

答え: 「田近先生、岩森先生のお話が面白かった。『物質循環』というテーマが良かった。」 「物理的なことは苦手なので、私には難しかったです。」 「内容は難しくて良く分からなかったですが、発表の仕方やみんなで議論する雰囲気などが参考になりました。」 「その分野の専門でない者にはなじみのない用語を前置きなしに語られても分からない。」 「メインテーマ以外のものもあったのが良かった。」 「岩森さんのは興味深かった。新しい情報を知ることができたが、質問できるほど理解できないレベルの高さだった。質は良かったと思う。坂元さんのは時機尚早。」 「皆さんの口から出る言葉の半分ぐらいが何のことやら分からなかったです。次回はもっと勉強してきます。」 「質問のために本論からそれがちで、フォローできないことが何度かあった。」 「勉強不足なのですが、どうしても他分野については少し難しかった。」 「物理の話が少なかった気が...(それで良かったけど。)」 「高レベルのものから低レベルのものまで入り混じっており、大変良い。数は少し多い(または日数を増やすべし)。」 「多分こんなもんだと思います。」 「良かった。」 「人数をしぼって多くの議論ができるようにした講演で良かった。内容も充実。」

問い: 開催時期について

答え:

  1. 適切 24人
  2. 不適切 1人「もう少し早いほうがよい。」

問い: 開催場所について

答え:

  1. 適切 22人
  2. 不適切 2人「やっぱり遠い。」「遠い。」
その他「遠いが巡検にちょうど良い。」

問い: 会場・宿舎について

答え:

  1. 満足 16人
  2. 不満 7人 「セミナーハウスはちょっと...。」 「もっと騒げる所のほうが。」 「お酒...。」 「しょうがないとは思うけど、門限とか厳しい。」 「 せっかく温泉に来たのに、歩いていけない。お土産やさんが近くにない。」 「夜が早い。」 「初日、ノンアルコール。」
その他「時間管理が厳しい。」

問い: その他お気づきの点があればお書きください。

答え: 「色々な大学の色々な研究をしている人に会えて楽しかった。あまり、たくさんの人と話しはできなかったけど、いい刺激になった。また、こういう機会があった らぜひ参加したいです。」 「若い人が運営を行っていて、かつ、議論が本質的だったので、とてもenjoyできました。」 「とても自分自身の研究のプラスになりました。」 「河野氏の芝居をもっとゆっくり見たかった。フリートーク、ポスターの時間が短か った。」 「ポスター発表が丁寧で、とても勉強になりました。」 「普段聞けないような話が聞けて良かったです。」「物理系の人が地球科学をどうとらえているかが分かりました。その先は、課題です。」 「様々な人がいて楽しめた。もっと個人的に議論する場があれば良かった。」

[目次へ]

全地球史解読「ちょー若手の会」の報告

第3回[別のページでごらんください]

                        東大理学系研究科 畠山唯達

第4回[別のページでごらんください]

                         東工大理学部 真砂英樹

第5回

                         大阪大学理学部 岡俊英
日時:
12月6日(土)14:00〜
場所:
大阪大学理学部宇宙地球科学科    F413宇宙地球科学棟セミナー室
参加者:
岡、丸岡、和田、豊田、山中(大阪大)、東條(京都大)、箕輪(都立大)、 岡庭、菊池、平家(名古屋大)

内容:

14:00〜・希ガス同位体地球化学  丸岡照幸

MORBなどのマントル起源物質中の希ガス同位体比から読む初期地球の脱ガスを中心と した大気形成・進化史

15:00〜 Tea & Coffee break

15:30〜・電子スピン共鳴(ESR)で地球科学をしてみよう  岡 俊英

ESRの簡単な原理からESR、ESRイメージングによる年代測定や環境変動の解明、また 新しい測定手法の地球科学への応用の可能性について

16:00〜・石英中のESR信号を用いて風成堆積物の起源を解明する試み  豊田 新

石英中に見られるESR信号をマーカーとした風成堆積物起源地の特定、モンスーン変動 の解明への試み

16:30〜 自己紹介&研究室見学

18:00〜 懇親会

ちょー若手の感想(菊池・平家)

当日、遅れてしまったために最初の話が聞けず、また話の内容も我々にとっては難しく、 話の細かい部分は理解できませんでした。しかし、大筋は理解できたと思います。ESR というものが存在するということ。それが不対電子を見ることができるということ。等々 研究室を見学させていただけたのも大変勉強になりました。有り難うございました。

[目次へ]

●報告とお知らせ

総括班会議(10/25/97)報告 重点のまとめについて

                        東大地震研究所 瀬野徹三
出席者:
熊沢峰夫,川上紳一,瀬野徹三,高野雅夫,増田耕一
オブザーバー:
山本宏之,伊藤繁

秋の学校の際に総括班会議を開き,今後のとりまとめに関して以下の議論を行った.

  1. 月刊地球に秋の学校(さらに春の学校も部分的に加える可能性もある)の内容を出 す.タイトルとして「全地球史解読の基礎」は違和感があるので増田耕一が考え,それ をメーリングリストで相談したうえ決める.この出版・編集に関してはあまり負担がか からない範囲で増田耕一が担当する.
  2. バイオマット報告書は,6月頃version 2としてラフな原稿を綴じたものを研究者の 間に配布,version 3ドラフトは全地球史解読の報告書とともに再来年出す.これを一般 用に編集したものは東大出版会から出版する(3の項目の一部となる可能性もある) (田崎報告書をversion 1とする).
  3. まとめを東大出版会の出版物として出すことに関して,全地球史解読の精神を生か し,縦糸と横糸のstructureが明示されるような,多次元的な出版物にしたいということ になった. 例えば箱の中に数冊の冊子を入れ,箱自体は横糸で編集するものの,それをばらして 縦糸で並べるとまた一冊の本となる,というような構想,あるいはある箇所をクリッ クすると別のスケールがいれ子になって開いたり,別のアイテムに飛んでいけるような もの, というイメージが出された.後者はwebがまさしくふさわしい手段であり,これ は別にwebのかたちで成果を残すということを検討したほうがよいかもしれない(これ については現行体制では対応しきれないので財政人材面を含めて検討したい). とも かくキーワードを羅列し,それを出版にふさわしいかたちで多次元空間に埋め込むとい う作業を今後ワーキンググループ(瀬野,川上,高野,丸山,磯崎,増田)で行うが, matome@seno-sun.eri.u-tokyo.ac.jpというメーリングリストをつくりその中でも議 論する.
  4. 成果まとめシンポジウム(研究者向け)を来年6月ころ行う.公募研究発表会を来 年3月ころ京大文博物館で行う(生命との共進化・縞々を中心とする,担当大野・川 上). それ以外に成果を連係させるためのワークショップを断続的に秋から冬にかけて行う. 成果とりまとめのための総括班会議と班長会議も同様に行う.
  5. 公開講座を文部省「研究成果公開発表」を申請して行う.時期は10年10月ー 11年2月. 講演者予定:熊沢峰夫,丸山茂徳,川上紳一 
  6. 来年秋AGU(S.F.)にセッションを申し込む.分野としてはUnionであろう.仮に全 地球史解読という名前でセッションが受け付けられなくても適当なセッションがあれば まとめてsubmitして成果を公表できるであろう.瀬野が今秋AGUで可能性を調査する.
  7. これからの組織化と予算獲得について多少話合った.DELP専門委員会下の「未来 委員会」が丸山提案のあとストップしているので,早急に復活したい.科技庁の川上紳 一路線は継続する.必要ならばもっと広い範囲でテーマと組織の模索を行うべきかもし れない.全地球史解読とのつながりや過去どのあたりまで扱うかなど,戦術的な面での 検討も必要である.
[目次へ]

全地球史解読 公募成果発表会開催のお知らせ

                         岐阜大・教育 川上紳一
日程:
1998年3月20日(金)〜22日(土)
場所:
京都大学文学部博物館3階会議室
参加申込締め切り:
2月27日(金曜日)までにこのレターの終わりにある フォーマット [HTML版では別ページ] を利用して、できれば、ファクスにて以下にお申し込み下さい。
申し込み先:
大野照文
〒606京都市左京区吉田本町
京都大学総合博物館
電話  075-753-3285
ファクス075-753-3276
電子メール ohno@terra.kueps.kyoto-u.ac.jp (現在トラブル続出で不安定)
プログラム:
プログラムは暫定的,概略的なものです。講演者は公募研究採択者の方々を予定してい ます。プログラムの詳細などは、講演申込状況に応じて確定します。時間的制約上、講 演時間の調整や、場合によってはポスター発表をお願いしますので、よろしくお願いい たします。
3月20日(金曜日)

13:00〜17:00   (1)生命と地球の共進化 

19:00〜ポスターセッション

3月21日(土曜日)

9:00〜12:00   (2)縞々学からのアプローチ

13:00〜16:00   (3)全地球史解読

18:00〜懇親会 4000円(教官)2000円(学生)程度の予定

○なお,これまでに公表した文献別刷あるいはアブストラクトを当日受け付けに提出してください。

講演・宿泊の申し込み:
締め切り 2月15日
宿舎は、ホリデー・インクラスのホテルにまとめて確保してあります。一泊料金 7000円前後(1部屋を複数名で使用) 7500円前後(シングル)
[目次へ]

公開講演会「地球環境と生物進化-40億年の歴史」のお知らせ

1998年3月22日(日)

京都大学総合博物館 3階会議室

参加者 一般市民および学生(全地球史解読の成果、展望を一般市民に理解していた だくために行う)

プログラム

10:00 大野照文	(京大総合博物館)あいさつ
10:05 丸山茂徳	(東京工大)新しい地球史
10:55 山岸明彦(東京薬大)(予定)生命の起源と初期進化
11:45 伊藤繁 (基礎生物研)光合成の起源と進化
昼食12:35−13:30
13:30 大野照文・川上紳一	(京大・岐阜大)多細胞動物の出現
14:10 磯崎行雄	(東大)大量絶滅の謎を解く
15:00-15:10 休憩
15:20 高野雅夫 (名大)地球史解読のテクノロジー
16:00 総合討論 (司会: 川上紳一)
16:40 丸山茂徳 (東京工大)
閉会のあいさつ
[目次へ]

●あとがき

またまたしばらく間が空いてしまいましたがニュース8号をお送りします.この間夏の 地質調査も順調に終わり,西オーストラリアではいよいよ仕上げの段階に入り,最古の 生命化石のすむ環境が明らかになる,等々重大な成果が続々と出ているようです.アフ リカナミビアの調査は東條氏が報告していますが,これに書けないような大変な事態も 起こっていたようで,よく無事に生還したものです.夏の学校は,若手が中心となって 企画・実行し,内容がよかったことから評価を高めました.三年目がいよいよ終了しつ つあり,まとめの段階に入ってきました.相互の情報伝達と連携を行い,得られた成果 を相互に突き合わせ,研究をさらに有機的に促進するためのワークショップやシンポジ ウムを開いていく必要があります.また,各研究者もまとめに向けて成果を目に見える 形で出版する,一層の研究者同士のコミュニケーションを計るなどの努力をお願いしま す.


●重点領域研究「全地球史解読」連絡先

代表者
熊澤峰夫,名古屋大学理学部,教授,464-01,名古屋市千種区不老町,052-781-5111ex.2536, 052-789-3013,052-789-3033,kumazawa@eps.nagoya-u.ac.jp
とる班代表
丸山茂徳,東工大理学部地球惑星,教授,152,目黒区大岡山2-12-1,03-5734-2618, 03-5499-2094,smaruyam@geo.titech.ac.jp
とけい班代表
大江昌嗣,国立天文台水沢観測センター地球回転研究系,教授,023,水沢市星ガ丘町2-12, 0197-22-7136,0197-22-2715,ooe@gprx.miz.nao.ac.jp
よむ班担当
川上紳一,岐阜大教育学部,助教授,501-11,岐阜市柳戸1-1,0582-93-2262,0582-30-1888, kawa@cc.gifu-u.ac.jp
もでる班代表・事務局・ニュースレター
瀬野徹三,東大地震研究所,教授,113,文京区弥生 1-1-1,03-3812-2111ex.5747,03-5802-2874, 03-3816-1159,seno@eri.u-tokyo.ac.jp
総括班データベース担当
増田耕一,東京都立大,助教授,192-03八王子市南大沢1-1,0426-77-2603, 0426-77-2589,masuda@geog.metro-u.ac.jp
全地球史解読WWW(仮):
http://www.comp.metro-u.ac.jp/~masudako/DEEP/
[目次へ]

このページは、瀬野徹三さんから次のメイリングリスト記事として 提供されたものに基づいています。

Date: Fri, 30 Jan 98 15:30:43 JST
From: seno@seno-sun.eri.u-tokyo.ac.jp (Tetsuzo Seno)
Message-Id: <9801300630.AA04260@seno-sun.eri.u-tokyo.ac.jp<
To: multier-news@seno-sun.eri.u-tokyo.ac.jp
Subject: zenchikyu newsletter no.8

HTML版作成: 1998-02-23 
増田 耕一 (東京都立大学 理学部 地理学科、
「全地球史解読」総括班員・情報処理担当)
masuda-kooiti@c.metro-u.ac.jp
[目次へ]
[全地球史解読ニュースレター一覧へ]
[全地球史解読のページへ]