第3回 全地球史解読「ちょー若手の会」の報告

日時:
1997年5月31日(土) 13:00〜
開催場所:
京都大学理学部 1号館 地質学鉱物学教室 第1講義室
参加者:
東條, 上田, 小島, 江川, 辻野, 山路(京大), 真砂(東工大), 岡(阪大), 加藤, 箕輪(都立大), 畠山(東大)

13:00 〜 山路 敦 氏 (京大・理)

タイトル:「月のテクトニクス」

要旨:

日本が本格的に参加する月面探査において, 構造地質学のはたす役割について. 月面の海では溶岩とクレーター形成衝突時のイジェクタが交互に水平に堆積し ているため, 地球における水成堆積岩に対する構造地質学が応用できる. 具体的な目標として,
  1. 多重リングクレーター周辺部の Mare basalt の流出, 堆積層の構造から リングの成因を決定する.
  2. 月面における断層, 褶曲構造の分布は応力場を反映しているが, 衝突盆を 埋めている玄武岩は斜長岩の月地殻に対して荷重となっている. ここから月リ ソスフェアの弾性的な厚さを決め, 月の熱史を論じる.
  3. 地球の潮汐力によって月の表面に応力場の後(褶曲軸の横ずれなど)が残る が, ある大きさより小さな応力による歪みは残らない. この力は地球から近い ほど大きいので, 地球−月間の距離が遠くなっていく過程である時代より古い 応力場の後しか残らない. そこから地球−月系の軌道進化を推定する.

15:00 〜 真砂 英樹 氏 (東工大・理)

タイトル:「造山運動のテクトニクスと変成岩」

要旨:

(1)変成岩岩石学の基本と進化 まず, 変成作用とはもとの岩石が温度・圧力などの外的条件の変化による安定 な鉱物組合せの変化や固体反応を指すことを示しその上で実際にフィールドで の変成岩調査で基本的な変成分帯, アイソグラッドの考え方を説明した. 次に岩石が受けた変成の度合を示す変成相をあげ, 4成分の系での温度圧力の 変化による固相反応と鉱物の共存関係について模式的に説明, この考えに従っ て変成分帯の色分けをすることを説明した.

次に現在考えられる造山帯の一生について変成岩岩石学をもとにした解説が なされた.

最後に最新の丸山理論「現在の地温勾配では地表からマントルに安定に水を供 給できるので海水は顕生代以降減り相対的に陸地の面積が増した」が紹介され た.

17:30 〜 参加者全員による簡単な自分の研究紹介

18:00 〜 懇親会

感想:

各分野の基本的な所を丁寧にわかりやすく話して頂いたので, ためになりまし た. どちらの方も『自分のやっていることはこうやって役に立つ』というポリ シーが強く感じられました. (文責:畠山)


東京大学理学部地球惑星物理学教室 畠山唯達
hatake@gpsun01.geoph.s.u-tokyo.ac.jp
Date: Tue, 17 Jun 1997 20:54:39 +0900
[HTML編集: 増田耕一、1997年6月20日]

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