1. 申請領域の必要性

1.1 本研究の目的とその概要

この研究の大局的な目標は,ほとんど唯一の地球史連続記録媒体である海底堆積物から,過去40億年間における地球とそれをとりまく宇宙の歴史を「解読」することである.この目標に向けて進むために避けて通れない最も基本となる事項を洗いだし,技術的な検討を行なった.その結果,われわれは以下に示す課題について,この解読が実行可能であること,および,刷新的な成果がえられることを確認した.

解読可能な,しかも斬新な諸課題の数はあまりにも多い.そこで本研究の計画研究では,試料採集,分析,データ解析などの研究の基本ステップにおける基礎の確立,および,次の二つの課題にしぼって焦点を合わせる.

(1)40億年前までの主要な地質時代における地球の日常的環境

日常的物理環境としては,気候,一日の長さ,大気と海洋の組成,地球磁場の強さ,大陸と海洋の大局的な分布,火成活動の程度,噴出する火成岩の組成,地球外物質の流入率などを考える.それらの変動を堆積物から読み取り,相互の関係からその変動が決まる要因や因果関係の解明をめざす.

(2)地質時代の区切りとなった事件(イベント)の実態と原因の究明

地球史上の大事件のうち,特に次の二つに着目する.

1. 太古代-原生代(A/P)境界の事件(27億年前 E3と19億年 E4)
かつて,約25億年前と考えられていた太古代-原生代境界は,原因も時代も異なる二つの事件であったとする作業仮説(口絵2)を検証し,その全貌を明らかにする.
2. ペルム紀-三畳紀(P/T)境界の事件(2.5億年前 E6)
約1千万年間にわたって,海洋が無酸素状態になり,生物の大絶滅が起こった.その原因にはさまざまな要因が考えられるが,まだ特定されていない.これを明らかにする.(口絵3および24ページ参照)

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