国吉秀鷹氏が国際天文学連合博士論文賞を受賞

日本学術振興会 海外特別研究員で英国ノーサンブリア大学の国吉秀鷹(くによし ひでたか)氏が,2025年の「国際天文学連合 博士論文賞」を太陽・太陽圏部門において受賞しました.この賞は,前年に出版された天文学研究の博士論文の中から国際天文学連合(International Astronomical Union,IAU)が優れたものを選び,各部門1名の研究者を表彰するものです.国吉氏は受賞対象となった論文「太陽コロナ加熱における渦の役割」で,2025年に東京大学大学院 理学系において博士号を取得しました.(2026年7月15日 掲載)



画像:国際天文学連合博士論文賞を受賞した国吉秀鷹氏.(クレジット:国吉秀鷹)

国吉氏は,太陽や低質量星がもつ「コロナ」と呼ばれる100万度を超える高温の外層大気の加熱メカニズムを,スーパーコンピュータを使った数値計算によって明らかにしようとしています.コロナは周囲の惑星の生命活動にも影響を及ぼす紫外線やX線の主要な放射源ですが,その加熱機構は最も詳細に観測できる太陽でさえ未解明です.国吉氏の博士論文では,アテルイⅡやアテルイⅢなどのスーパーコンピュータを用いた世界最高水準の規模と解像度を有したシミュレーションによって,太陽表面の微小な渦が磁場をねじることで「磁場の竜巻」を形成し,コロナへ磁気エネルギーを供給する過程を解明しました.さらに,このエネルギーが,コロナ加熱の証拠と考えられているごく小さな爆発現象(ナノフレア)を引き起こすことを示し,数百例の解析からその結果が実際の観測とよく一致することを確認しました.この成果は,太陽表面の磁気活動がどのようにしてコロナを高温にしているのかを説明する新しい仕組みを示したもので,太陽や恒星が放つ高エネルギーの光や粒子の理解につながることが期待されます.

動画:アテルイⅢを用いたシミュレーションによって示された,太陽表面の微小な渦によって形成される「磁場の竜巻」の様子.白い線が磁力線を表しており,下部の白い線の根本が太陽表面で,上側にコロナが存在していると想定している.太陽表面からコロナへ伸びる磁力線が強く捻れたる様子が描き出されている.なお,表面直下の対流層は鉛直速度に応じて色付けされており,赤が下降流,青が上昇流を表す.(クレジット:国吉秀鷹)

国吉氏は,「本研究は,指導教員,共同研究者,そして研究者仲間の方々,そしてCfCAにご提供いただいた多大な計算資源なしには成し得ませんでした.太陽コロナは宇宙プラズマ研究の基盤となる存在であり,新世代の観測機によるさらなる発展も期待されています.今後は、太陽物理で培った知見を活かしながら,分野横断的な研究にも積極的に取り組んでいきます」と,今後の展望を述べています.

本研究で使用されたスーパーコンピュータについて

国吉氏の研究では、国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」(Cray XC50、左)および「アテルイⅢ」(HPE Cray XD2000、右)が利用されました。アテルイⅡは理論演算性能3.087ペタフロップス(1ペタフロップスは1秒間に1千兆回の演算ができる性能を表す)のシステムで、2024年8月まで運用されていました。その後継機であるアテルイⅢは2024年12月に運用が開始された天文学専用スーパーコンピュータです。総理論演算性能は 1.99 ペタフロップスの性能を有し、メモリバンド幅が⼤きい「システム M」と、メモリ容量が⼤きい「システムP」の 2 つのシステムから構成されています。(クレジット:国立天文台)

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