守屋尭 助教が第9回自然科学研究機構若手研究者賞を受賞

天文シミュレーションプロジェクトの守屋尭 助教が第9回自然科学研究機構若手研究者賞を受賞しました.この賞は若手研究者の育成を目的としたもので,新しい自然科学分野の創成に熱心に取り組み,萌芽的研究連携を促進して成果をあげた優秀な若手研究者に送られます.守屋氏の研究テーマは「超新星で明らかにする大質量星の断末魔」です.2020年6月14日に自然科学研究機構ウェブサイトで,守屋氏の受賞記念講演動画が公開されます.(2020年6月12日 掲載)

講演動画:自然科学研究機構「第9回若手研究者賞受賞者決定!講演動画は6/14公開」




若手研究者賞を受賞した守屋尭 助教.

守屋氏は,太陽の10倍以上の質量が進化の最期に起こす超新星爆発を理論と観測の両面から研究しています.大質量星は進化中に多くの物質を放出しますが,この現象の不定性が恒星進化の理解を難しくしています.放出された物質は星周物質となり,その後起こる超新星爆発の観測にも影響を与えます.

この現象について,守屋氏は輻射流体力学の数値シミュレーションを行うことで,高密度な星周物質の中で超新星爆発が起こった場合の明るさの変化の系統的な研究を,世界に先駆けて行いました.さらに守屋氏のシミュレーションと,チリ大学の研究チームによって爆発直後に発見された超新星観測データと比較することで,ほとんどの大質量星が超新星爆発の直前100年以内に大規模な物質放出を行っていることが世界で初めて明らかになりました.(2018年プレスリリース「明らかになった大質量星の最期の姿 — 厚いガスに包まれた星の終焉」)このように守屋氏は,大質量星の終末期進化について新しい描像の確立に中心的な役割を果たしてきました.

今回の受賞にあたり,守屋氏は「自然科学研究機構という天文学に限らない多くの自然科学分野を網羅する組織から若手研究者賞を頂き大変嬉しく思います.この賞を励みに今後も精力的に研究を進めて行くのはもちろん,多くの方々に超新星や恒星進化の面白さを伝えていけたらと思います.また,受賞につながった研究ではCfCAの運用する『計算サーバ』の計算資源を多く使わせて頂きました.CfCAを支えてくださる皆さまにも感謝いたします」と述べています.

本受賞を記念し,2020年6月14日に自然科学研究機構ウェブサイトにおいて,受賞者の講演映像が公開されます.



図1:チリ大学のチームによって観測された超新星 26 天体の光度曲線と(丸印),従来の理論予測(破線),厚いガスに覆われている場合のシミュレーション(実線)のそれぞれの明るさを比較している.シミュレーションは,ガスの密度や速度などを変えて多数回行っている.SNHiTS15G,SNHiTS15Q をのぞく 24 天体については,従来の理論予測よりも実際の観測が早く明るくなること,観測データとシミュレーションの結果がよく一致していることがわかる.(クレジット:Förster et al. Nature Astronomy (2018) を改変)

【使用されたコンピュータについて】

守屋氏の研究で実施された超新星の光度変化のシミュレーションは,国立天文台天文シミュレーションプロジェクトが運用する共同利用計算機の一つである「計算サーバ」を使って行われました.このシステムは,各々のモデル計算は小規模ながらも多数の初期値から出発する長い計算時間を必要とするシミュレーションや,超大型のスーパーコンピュータで行うシミュレーションの準備段階の計算に用いられています. 2020年3月現在のシステム規模は1344コアです.(右画像 クレジット:国立天文台)

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