隕石中に小惑星の氷の痕跡を発見

【概要】

東北大学院理学研究科の松本恵 助教と国立天文台科学研究部の片岡章雅助教らによる共同研究チーム(京都大学、立命館大学、海洋研究開発機構、高輝度光科学研究センター、産業技術総合研究所、ロンドン自然史博物館など)は、理化学研究所のSPring-8による放射光X線CTを使って、炭素質コンドライトの一つAcfer 094隕石の内部を観察し、氷が抜けてできたと考えられる小さな空間を多数発見しました。
太陽系形成初期に原始惑星系円盤の低温領域で形成した小惑星は、形成当時に氷を含んでいたと考えられています.小惑星由来の隕石には、氷が融けて生じた水と岩石との相互作用によって形成した含水鉱物が多く見つかっています。しかし、水の素となった氷の存在や分布を示す直接的な証拠は、これまではっきりと示されていませんでした。
本研究では、小惑星の氷の痕跡である氷が抜けてできた空間とその分布を、隕石中で初めて直接的に示しました。空間を作り出した氷は、惑星の素となる塵が太陽からの熱を受けることで “氷とケイ酸塩粒子の塊” となって小惑星に取り込まれます。その後、さらに太陽からの熱を受けることで氷部分が融けて無くなり、今回観察されたマイクロメートルサイズの空間が生じたと考えられます。
これらの研究成果は、2019年11月20日(米国時間)付けで、米国科学雑誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。

詳しくは国立天文台 科学研究部からのニュースリリース「隕石中に小惑星の氷の痕跡を発見」(2019年11月22日)をご覧ください。

※ 天文シミュレーションプロジェクト併任



図1:箱型に成形した隕石試料のX線CT (8 keV )による断面像。白色の点線で囲まれた部分に、黒色の空隙が多く含まれている。もともとあった氷が抜けてできた空間と考えられる。明るい灰色~暗い灰色の物質はケイ酸塩粒子、白い物質は硫化鉄粒子を表している。
© Megumi Matsumoto et al.



図3:Acfer094 隕石母天体の形成過程の模式図。①隕石の母天体は、塵を集積して成長しながら太陽系内を外側から内側に移動します。雪線より外側では氷–ケイ酸塩粒子からなる多孔質な塵が集積することで、氷に富んだ天体に成長します。②成長した母天体はどんどん内側に移動し、雪線付近までやってきます。雪線付近では、氷–ケイ酸塩粒子からなる多孔質な塵が温度上昇によって、氷とケイ酸塩粒子の隙間のない塊を形成しています。それらは、氷をまとわない岩石の塵と共に隕石母天体の表面に集積します。つまり、母天体の内側は氷に富んだ状態に、外側はケイ酸塩に富んだ層に氷の塊が含まれた状態になります。③母天体はさらに円盤を内側に移動し、太陽からの熱を受けます。すると母天体内の氷が融けて水が生じます。外側の層に含まれていた氷の塊が融けて無くなった部分には、今回観察されたマイクロメートルサイズの空間が生じます。また、中心部の氷に富んだ部分でとけた水は外側の層まで移動し、外側の層のケイ酸塩の一部が含水化します。④その後母天体の一部が破砕されて破片が宇宙空間に放出され、Acfer 094隕石となって地球に飛来します。
© Megumi Matsumoto et al.


【論文について】

題目:Discovery of fossil asteroidal ice in primitive meteorite Acfer 094
著者:M. Matsumoto, A. Tsuchiyama, A. Nakato, J. Matsuno, A. Miyake, A. Kataoka, M. Ito, N. Tomioka, Y. Kodama, K. Uesugi, A. Takeuchi, T. Nakano and E. Vaccaro
掲載誌:Science Advances
DOI:10.1126/sciadv.aax5078


【画像の利用について】

【関連リンク】

国立天文台 科学研究部プレスリリース「隕石中に小惑星の氷の痕跡を発見」
東北大学 プレスリリース「隕石中に小惑星の氷の痕跡を発見―氷が抜けてできた空間を放射光X線CTで発見」
東北大学 理学部・理学研究科 プレスリリース「隕石中に小惑星の氷の痕跡を発見―氷が抜けてできた空間を放射光X線CTで発見」