明らかになった大質量星の最期の姿 ― 厚いガスに包まれた星の終焉

【概要】

大質量星が一生の最期に起こす超新星爆発.その爆発直前の星が大量のガスを放出していることが,このたび明らかになりました.これは標準的な星の進化の理論では考えられていなかったことです.爆発直前に放出される厚いガスに包まれた超新星爆発のシミュレーションと,爆発直後の超新星を多数観測したデータとの詳細な比較とを行った,国立天文台の守屋尭 特任助教らの研究の結果,星の進化の最終段階に新たな知見が加わったのです.本研究は,2018年9月3日付の英国の科学雑誌「Nature Astronomy」オンライン版に掲載されました.(2018年9月4日 プレスリリース)



図1:本研究により明らかになった大質量星の最期のイメージ.星のごく近傍を星から放出されたと考えられる厚いガスが取り囲んでいる.
(クレジット: 国立天文台)
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図2:観測された超新星 26 天体の光度曲線と(丸印),従来の理論予測(破線),厚いガスに覆われている場合のシミュレーション(実線)のそれぞれの明るさを比較している.シミュレーションは,ガスの密度や速度などを変えて多数回行っている.SNHiTS15G,SNHiTS15Q をのぞく 24 天体については,従来の理論予測よりも実際の観測が早く明るくなること,観測データとシミュレーションの結果がよく一致していることがわかる.
(クレジット:Förster et al. Nature Astronomy (2018) を改変)
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内容の詳細についてはこちらをご覧ください:国立天文台理論研究部 プレスリリース「明らかになった大質量星の最期の姿 ― 厚いガスに包まれた星の終焉」


【論文について】

題目:The delay of shock breakout due to circumstellar material evident in most type II supernovae
著者:F. Förster, T. J. Moriya, J.C. Maureira, J.P. Anderson, S. Blinnikov, F. Bufano, G. Cabrera–Vives, A. Clocchiatti, Th. de Jaeger, P.A. Estévez, L. Galbany, S. González– Gaitán, G. Gräfener, M. Hamuy, E. Hsiao, P. Huentelemu, P. Huijse, H. Kuncarayakti, J. Martínez, G. Medina, F. Olivares E., G. Pignata, A. Razza, I. Reyes, J. San Martín, R.C. Smith, E. Vera, A.K. Vivas, A. de Ugarte Postigo, S.-C. Yoon, C. Ashall, M. Fraser, A. Gal–Yam, E. Kankare, L. Le Guillou, P.A. Mazzali, N.A. Walton, D.R. Young
掲載誌:Nature Astronomy
DOI:10.1038/s41550-018-0563-4

【本研究で使用されたコンピュータについて】

「計算サーバ」は国立天文台 天文シミュレーションプロジェクトが運用する計算機群です.このシステムは小規模ながらも長い計算時間を必要とするシミュレーションや,大型のスーパーコンピュータで行うシミュレーションの入門的な計算に用いられます.2018年9月現在,224ノードで構成されています.(クレジット:飯島裕)

【画像の利用について】

【関連リンク】

国立天文台 理論研究部 プレスリリース「明らかになった大質量星の最期の姿 ― 厚いガスに包まれた星の終焉」
国立天文台 プレスリリース「明らかになった大質量星の最期の姿 ― 厚いガスに包まれた星の終焉」
チリ大学 プレスリリース「Chilean scientists discover crucial event right before the death of a star」(英語)
守屋尭 個人ウェブページ(英語)