リリース

地球規模の望遠鏡とスーパーコンピュータで,ブラックホールの素顔にせまる

ブラックホールを画像として捉えること,それは天文学における究極の目標の一つです.イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope,以下EHT)は,ブラックホールの姿を捉えるべく世界中の8か所の電波望遠鏡をつないだ,いわば地球サイズの望遠鏡です.2017年から始まったこの観測の初めての結果が,このたび公開されました.地球から5500万光年離れた楕円銀河M87の中心に存在する巨大ブラックホールが作り出す「ブラックホールシャドウ」と呼ばれる黒い影とその周辺の「光子リング」をEHTは描き出しました.観測の詳細については国立天文台プレスリリース「史上初、ブラックホールの撮影に成功―地球サイズの電波望遠鏡で、楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る」をご覧ください.

ガンマ線バーストの放射メカニズムにせまる ―スペクトルと明るさの相関関係の起源を解明―

【概要】

 宇宙最大の爆発現象である「ガンマ線バースト」の起源の一部は,大質量星が一生の最期に起こす大爆発で形成されるジェットによるものと考えられていますが,そこからのガンマ線の放射メカニズムは長い間謎とされてきました.理化学研究所の伊藤裕貴研究員らによる研究チームは,国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイ」などを用いて,放射メカニズムとして有力と考えられている「光球面放射モデル」を,現実に近い条件のもと大規模なシミュレーションを行いました.その結果,これまで観測的に知られていたガンマ線バーストのスペクトルと明るさの相関関係「米徳(よねとく)関係」を再現することに成功しました.これは,ガンマ線バーストの主要な放射メカニズムが光球面放射であることを示し,大質量星の爆発の過程を解き明かすことにつながる成果です.
 この研究成果は英国のオンライン科学雑誌「Nature Communications」に2019年4月3日に掲載されました.
(2019年4月3日 プレスリリース)

中性子星合体からの光を分析する世界最高精度の原子データの構築 ―核融合科学と天文学の協力で重元素の起源を紐解く―

【概要】

 金やレアアース元素などの重元素の起源として、中性子星同士の合体が近年注目されています。中性子星合体で生成される重元素の種類や量を調べるには、合体したときに放射される電磁波を分析する必要があります。核融合科学研究所の加藤太治(かとうだいじ)准教授、リトアニアのビリニュス大学のガイガラス・ゲディミナス教授、東北大学の田中雅臣(たなかまさおみ)准教授らは、核融合研究に用いられる計算手法を応用した大規模計算によって、中性子星合体からの光の解析に欠かすことのできない、元素が吸収・放射する光の波長や強さなどを表す原子データを、世界最高の精度で求めることに成功しました。天文学と核融合科学の協力により、宇宙における重元素の起源の解明が今後さらに加速することが期待されます。
この研究成果は2019年2月1日(日本時間2月2日)に米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・サプリメント・シリーズ』オンライン版に掲載されました。
(2019年2月21日 プレスリリース)

超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く

【概要】

国立天文台の泉拓磨氏,鹿児島大学の和田桂一氏を中心とする研究チームは,アルマ望遠鏡を使ってコンパス座銀河の中心に位置する超巨大ブラックホールを観測し,その周囲のガスの分布と動きをこれまでになく詳細に明らかにすることに成功しました.活動的な超巨大ブラックホールの周囲にはガスや塵のドーナツ状構造が存在すると考えられてきましたが,その成因は長年の謎でした.今回の観測結果とスーパーコンピュータ「アテルイ」によるシミュレーションを駆使することで,超巨大ブラックホールの周囲を回りながら落下していく分子ガス円盤と,超巨大ブラックホールのすぐ近くから巻き上げられる原子ガスの存在が浮かび上がり,これらの「ガスの流れ」が自然とドーナツ的構造を作っていることが確かめられました.この結果は,存在そのものは天文学の教科書に掲載されていながら,その詳しい構造・運動・形成メカニズムがわかっていなかったドーナツ状構造の正体を暴いた,重要な成果といえます.(2018年11月30日 プレスリリース)

中性子星の連星をつくる、外層が大きく剥がれた星の超新星爆発を発見

【概要】

2017年、連星を成す二つの中性子星の合体現象が、重力波と電磁波を用いた観測によって世界で初めて捉えられました。実は、中性子星どうしの連星が作られる条件はたいへん難しいと考えられており、その形成過程はこれまで明らかになっていませんでした。この問題を解決するために、国立天文台理論研究部の守屋尭 特任助教らの研究チームは、次のような理論が唱えてきました。中性子星と連星を成している星の外層が大きく剥がれ、その状態で超新星爆発を起こすと、結果、中性子星どうしの連星が作られるという説です。そしてついに、この理論で予測された外層が大きく剥がれた超新星とよく一致する特徴を示す超新星が、過去の観測データからこのたび発見されたのです。これは、中性子星どうしの連星を形成すると考えられる超新星爆発を、世界で初めて捉えた観測と言えます。(2018年10月12日 プレスリリース)

すばる望遠鏡発の精密宇宙論の幕開け ―ダークマター、ダークエネルギーの解明を目指して―

【概要】

すばる望遠鏡の威力を最大限発揮させた超広視野主焦点カメラ ハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam,HSC)による宇宙観測の国際共同研究プロジェクトは,宇宙の3次元ダークマターの空間分布について最も深く(過去の宇宙)かつ広い天域の地図を作成し,解析しました.東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の日影千秋特任助教を中心とする,東京大学,国立天文台,名古屋大学,米国プリンストン大学,米国カーネギーメロン大学,台湾中央研究院天文及天文物理研究所(ASIAA)の研究者らからなる国際研究チームは,約 1000 万個の銀河の形状における重力レンズ歪み効果を観測することに成功し,銀河などの宇宙の構造の形成の度合いを表す物理量を精密に測定しました.今回の HSC の結果と欧州宇宙機関(ESA)の宇宙背景放射観測衛星「プランク」および他の宇宙観測の結果と組み合わせることで,研究チームは宇宙最大の謎であるダークエネルギーの性質についても知見を得ることに成功しました.(2018年9月26日 プレスリリース,10月3日掲載)

明らかになった大質量星の最期の姿 ― 厚いガスに包まれた星の終焉

【概要】

大質量星が一生の最期に起こす超新星爆発.その爆発直前の星が大量のガスを放出していることが,このたび明らかになりました.これは標準的な星の進化の理論では考えられていなかったことです.爆発直前に放出される厚いガスに包まれた超新星爆発のシミュレーションと,爆発直後の超新星を多数観測したデータとの詳細な比較とを行った,国立天文台の守屋尭 特任助教らの研究の結果,星の進化の最終段階に新たな知見が加わったのです.本研究は,2018年9月3日付の英国の科学雑誌「Nature Astronomy」オンライン版に掲載されました.(2018年9月4日 プレスリリース)

偏光観測が明らかにした活動的小惑星フェートンの素顔

【概要】
 小惑星フェートン(Phaethon)は彗星に似た特異な軌道を持つ小惑星で,地球に近づくこともあります.この天体は,ふたご座流星群のもとになる塵(ちり)を供給した天体であるとされており,太陽に近づく時期には定期的に物質を放出するなど,彗星に近い性質を持つ「活動的小惑星」としても知られています.このように彗星的とも小惑星的とも言える天体の表面状態はとても興味深く,また謎の多いものです.
 国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの伊藤孝士助教らの研究チームは,北海道名寄市においてフェートンの偏光観測を行い,この天体の表面では他の太陽系天体に比べて偏光度がとても大きいことを明らかにしました.この特徴は,(1)表面にある粒子のサイズが大きい,(2)フェートンの表面が空隙率の高い構造をしている,(3)フェートンの表面物質による反射率がとても低い,という3つの可能性があることを示しています.今回の観測結果は地球に物質を供給しながら太陽に繰り返し近づく天体の起源と進化の理解に大幅な見直しをせまるものです.
 この研究成果は2018年6月27日に英国の科学雑誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載されました.(2018年6月29日プレスリリース)

新天文学専用スーパーコンピュータ『アテルイⅡ』始動!

■概要

国立天文台天文シミュレーションプロジェクト(Center for Computational Astrophysics:CfCA)では,天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイ」にかわる新たな大規模数値計算専用計算機として Cray XC50 システムを導入し,2018年6月1日より国立天文台水沢キャンパス(岩手県奥州市水沢)にて本格運用を開始します.新しいスーパーコンピュータシステムは,2013年のアテルイ導入時の約6倍,2014年のアップグレード以降の3倍の理論演算性能である3.087 Pflops(ペタフロップス) に向上しました.この性能によってアテルイではできなかったシミュレーションを行い,「理論天文学の望遠鏡」として新しい宇宙の姿を描き出すことが期待されます.この新システムの愛称は,前システムを引き継ぎ「アテルイⅡ(ツー)」と名付けられました.(2018年6月1日 プレスリリース)

アマチュア天文家の捉えた超新星爆発は、爆発の瞬間だった!

【概要】

ラプラタ国立大学天体物理学研究所,東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU),国立天文台,京都大学などの研究者らからなる国際研究チームは,アルゼンチンのアマチュア天文家のVíctor Buso氏が偶然観測した超新星が,ショックブレイクアウトと言われる爆発したばかりの段階であったということを,観測データの解析及びシミュレーションから明らかにしました.ショックブレイクアウトは,理論から長年予測されていたものの,継続時間の短いとされる現象のためこれまで観測で捉えられたことはなく,世界中の研究グループにより探されてきました.重い質量の星がどのように超新星爆発として爆発するのかを理解する上で,今回得られた超新星爆発の最初の瞬間の情報は大変重要な一歩です.本研究成果は英国科学雑誌 Nature の2018年2月22日号に掲載されました.国立天文台天文シミュレーションプロジェクトからは田中雅臣 助教が研究チームに参加しています.(2018年2月22日 プレスリリース)

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