1.2 本研究の意義

この全地球史解読計画の意義は,わが国の研究者独自の実績,アイディアと構想をいかし,関連諸分野の考え方や手法を総合することによって地球惑星の実証的進化研究に欧米追従型でない新機軸をだして見せようというものである.

地球惑星科学の究極の目標は,未来までを含めた全地球(宇宙,太陽系,惑星系)史を合理的に設定した必然性の帰結としてわれわれが理解することである.現在の地球についての研究の進展はめざましい.しかし,過ぎ去った46億年間に起こったさまざまな事象を知り,しかもそれらの因果と相互作用の必然性を理解するのは,まだまだ遠い先のことであるとわれわれは思い込んできた.

そこで,われわれの理解はなかなか進まないものだという常識,悪く言えば元気のないこの閉塞感をなんとか突破したいとさまざまな模索をしてきた.しかるに最近,事態は急速に変わりつつ(変えつつ)ある.それは何とわれわれの足元の地球に,過去40億年間にわたる太陽系と地球の歴史を連続記録している媒体があったので,われわれはこれをいち早く察して関連分野の知を結集した地球史解読の研究戦略を確立したところである.そこで,われわれは世界に先駆けてこのような研究に重点的に投資し,地球惑星科学分野にひとつのオリジナルな切り口を示すべきだと判断した.

特に2-40億年前の堆積岩の連続試料は惑星探査でも得られない豊富な情報源である.しかし,その連続データの組織的取得は今までなされたことがなかったので,「期待されない発見が期待される」可能性が大きい.本研究申請では,既存の技術を新しい観点で組み合わせることによって,新しい測定手段をいくつか開発して,これまで「考え」としてはあっても,手間がかかってできなかったことを具体的な目標にむけて「実行」できるようにする.これによって,地球史の連続的データから新しい「惑星としての地球」史像が導きだせると考える.

また,このようなデータが多量に取得できれば,さまざまなアイディアをすぐそのデータで調べることができるので,個別研究に新しい着想を誘導するであろう.このような研究体制は,少なくともわが国におけるこれまでの状況とは異なるので,地球惑星科学全体,特に地質科学の研究や教育のあり方にも大きな影響を与えることになる.


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