巻頭言

 天文シミュレーションプロジェクト(Center for Computational Astrophysics, CfCA)は、2006年4月に国立天文台天文学データ解析計算センターが「天文データセンター」と「天文シミュレーションプロジェクト」に分割・改組され発足したものです。天文学データ解析計算センターの中で「大規模シミュレーション運用グループ」とよばれていた、理論シミュレーション用スーパーコンピューターと重力多体問題専用計算機 GRAPE の共同利用を行ってきたグループが母体となっています。

 2007年度末には計算機システムがリプレイスされ、富士通 VPP5000 が NEC SX-9 と Cray XT4 の複合システムとなり、演算能力で50倍の増強を実現しました。また、 GRAPE-7 システムも運用を開始し、従来の GRAPE-5 システムに比べると30倍の計算能力の増強を実現しました。さらに2010年度からは GRAPEシリーズの最新機である GARPE-DR の運用も開始しています。

 2011年度も、この年報にある通り多くのユーザが CfCA の共同利用計算機システムを利用し、素晴らしい研究成果をあげたことは嬉しい限りです。特に東日本大震災の直後には計画停電などによりシステム停止が数多く発生し、夏季には節電のための縮退運転によって計算機の運用時間が短くなり、ユーザには御不便をおかけしたにもにも関わらず、例年と同様の水準で研究成果が産出されたことは素晴らしいことです。

 2011年度は、本システムの運用の4年目であり、これまでに比べてハードウェア・ソフトウェアのトラブルもさらに減少し、安定運用ができたと思います。また、ファイルサーバの増強や、節電対策の小消費電力計算サーバの構築を行っています。今後も、多くのユーザが有効に研究に利用でき、素晴らしい研究成果をあげられるシステムを提供すべく努力を続けていきたいと考えています。また、2013年度初頭には現在のスーパーコンピュータシステムを入れ換えて最新の機材を稼働させるべく、機器調達作業を進めています。

 東日本大震災後の電力不足により今夏も節電のため縮退運転を行う可能性があります。ご迷惑をおかけしますが、御理解と御協力をよろしくお願いします。

2012年7月20日
天文シミュレーションプロジェクト プロジェクト長 小久保英一郎


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