カイパーベルトは予想外に広大か? ―すばる望遠鏡 超広視野観測で「ニュー・ホライズンズ」に協力―

概要

太陽系外縁部を進むニュー・ホライズンズ探査機にすばる望遠鏡の広く深い撮像観測が貢献しています。すばる望遠鏡の超広視野カメラで撮られたカイパーベルト天体の探査画像に独自の解析手法を適用した結果、カイパーベルトの領域を広げる可能性のある天体が発見されました。
本研究成果は、日本天文学会欧文研究報告(Publications of the Astronomical Society of Japan;PASJ)に 2024年5月29日付で掲載されました(Yoshida et al. "A deep analysis for New Horizons' KBO search images")。また、本研究には国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの伊藤孝士 講師が参加しています。研究の詳細はハワイ観測所ウェブサイトをご覧ください。(2024年6月26日 掲載)



図1:今回発見された2つの天体の軌道を示す模式図(赤色:2020 KJ60、紫色:2020 KK60)。+は太陽の位置、黄緑は内側から木星、土星、天王星、海王星の軌道、縦軸と横軸の数字は太陽からの距離(天文単位;1天文単位は太陽ー地球間の距離に相当)を表します。黒い点は太陽系初期にその場で形成された氷微惑星群と考えられている古典的なカイパーベルト天体を表し、それらは黄道面付近に分布しています。灰色の点は軌道長半径が30天文単位以上の太陽系外縁天体を表します。これらは海王星に散乱された天体も含みますので、遠くまで広がっており、多くは黄道面から離れた軌道を持ちます。図の丸や点は 2024年6月1日時点での位置を表します。(クレジット:JAXA)
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研究者のコメント

ニュー・ホライズンズ・ミッションは北米の科学者を中心に推進されていますが、それを支援する地上観測では国立天文台のすばる望遠鏡が中核的な役割を果たしています。そこでは、日本にいる研究者も観測だけではなく解析手法の開発や理論計算の側面で寄与しています。私も観測計画の立案や実際の観測作業に参加することに加え、データ解析の最終段階となる天体の目視検証(検出された信号が真の天体か否かの判定)を行いました。私達は日本が運用する望遠鏡を使って観測を実施し、日本で開発された手法を使ってデータ処理を行うことで、太陽系外縁部に関する知見を大きく広げる天体たちを見付けました。そうした努力がニュー・ホライズンズ・ミッションの地上観測チームによる最初の論文として結実しました。このミッションに参加できていることを改めて嬉しく感じ、光栄に思います。
(国立天文台天文シミュレーションプロジェクト 伊藤孝士 講師)

論文

タイトル:"A deep analysis for New Horizons’ KBO search images"
著者:Fumi Yoshida et al.
掲載誌:Publications of the Astronomical Society of Japan
DOI:10.1093/pasj/psae043

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関連リンク

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