巻頭言

「巻頭言は新人が書く」という計算センター伝統に従って、今回の
担当を仰せつかった高田唯史です。2005年3月より助教授として
当センターに着任しております。現在は、主に日本が世界に誇る
すばる望遠鏡からのデータを貯蔵し管理・配布するためのシステム
などの管理を行いながら、銀河の形成や進化といった現在の天文学
においてホットな題材の研究にも並行して取り組んでおります。
 さきほど”新人”と書きましたが、実は私の場合は10年ぶりの
復帰ということになります。10年前にCOE研究員として当センター
に着任し、その後1年半ほどしてすばる望遠鏡を建設中のアメリカ
・ハワイ州・ヒロ市に赴任して8年半ほどを過ごし、この度任務を
”一応”終了して古巣に舞い戻ってきた、といった感じです。しか
しながら、古巣といっても10年前とは状況は大きく変わっており
まして、毎日周囲の方々にご迷惑をおかけしながら、業務の流れにも
少しずつ慣れ始めている、といった状況です。
 当センターはスーパーコンピュータシステムを中心とする計算機群
を運用しながら、全国の天文研究者に対しての共同利用を行っており
ます。このシステム上では大規模なシミュレーションの他にも、すば
るや野辺山、岡山を始めとする共同利用観測所のデータ解析なども行
われており、まさに日本の天文学遂行の中心となっています。また、
各観測所のデータを貯蔵し公開するアーカイブシステムの開発・運用や、
観測データを世界中の天文学者に提供するための仕組みとしてのバー
チャル天文台(VO)計画の推進の中心にもなっています。これらの取り
組みは今後もSolar-BやALMAといった大型計画が目白押しの日本の天文学
業界において、研究を円滑に遂行する上での基本的な土台になっていく
ものと思っています。計画が大型化すればするほど、データの生産量は
大きくなり、同時に、多額の資金を利用する宿命として、より有効な観測
データの利用はもはや研究者の義務となってきているわけですから、その
ようなデータが集まり、また、有効に利用するための設備の整った当セン
ターの果たす役割は日に日に増して行くと思われます。こういった状況を
考慮し、天文コミュニティーとの意見交換をしながら、よりよいシステム
作りに取り組むことが当センターの大きな役割であることは間違いない
ところです。
個人的には、今後も増え続ける山のような観測データにどっぷりつかり
ながら、私の研究においては究極のテーマである銀河の形成・進化に関
して、統計的に圧倒的に有意な情報に基づいた研究を展開していけるよ
う様々なソフトウェアシステムの整備や開発などを皆さんと協力しなが
ら行っていきたいと思っております。