天文学統合データベースプロジェクト
本プロジェクトは,これまで国立天文台に存在しなかった電波天文用のデータベースを,将来的には多波長のデータベースと統合できる形態で,開発するものである。本プロジェクトは順調に進み,既にその本体は野辺山宇宙電波観測所で稼動を開始している。本システムは,天文学データ解析計算センターおよび野辺山宇宙電波観測所のホームページからアクセス可能である(http://nrodb.nro.nao.ac.jp/)。
また,本アーカイブは電波天文用のデータ解析システムであるNEWSTARから直接アクセスすることが可能である。しかも,利用者は本データベースにアクセスしていることを全く意識することがない。このような形態を持つデータアーカイブ--サイエンスアーカイブ--は世界的にも珍しいものであり,今後のデータアーカイブの標準的なものとしてさらに発展させて行きたい。
そして,稼動後のデータ公開が平成13年7月1日に予定されている。これにより,わが国の電波天文のコミュニティにおいても,自らの観測データだけでなくネットワークを経由した高品質な観測データを用いる新しいスタイルの天文学を進める素地が完成した。
JSTプロジェクト
本プロジェクトは,天文学データ解析計算センター,電波天文学研究系,光赤外線天文学・観測システム研究系,理論天文学研究系,および,東京大学,お茶の水女子大学との間の共同研究であり,科学技術振興事業団からの産学連携等研究費によって平成10年度から平成13年度までの予定で実施されている。研究代表者は大石雅寿であり,5名の若手
研究員を雇用してプロジェクトを実施している。
本プロジェクトでは,上記(2)によってまず構築された電波天文用データアーカイブ・データベースのデータを活用して天文学的知見を見出すために必要な観測データ解析システムの整備(NEWSTARの多プラットフォーム対応,干渉計によって得られるdirty
mapから天体の輝度分布を再構築するための新しいCLEANアルゴリズム--Wavelet CLEAN--の開発),アーカイブから安定的にデータ転送できる環境を構築するための高速転送アルゴリズムの開発,そして,理論シミュレーションデータベースの構築研究,高速ネットワークを利用した分散データ解析システムの試作,大量データから有用な知識を見出すデータマイニング技術を天文学に応用する研究,などを実施している。
平成12年度には,上に述べた開発項目のうちNEWSTARの多プラットフォーム対応,Wavelet CLEANアルゴリズムの開発,高速データ転送アルゴリズムの開発などがほぼ終了した。特に,高速データ転送アルゴリズムについては東京大学の発明委員会より特許申請を行った。残っている研究項目に関しても,13年度の終了を目指して,鋭意研究を進めている。