巻頭言

天文シミュレーションプロジェクト(Center for Computational Astrophysics, CfCA)は、 2006年4月に国立天文台天文学データ解析計算センターが「天文データセンター」と「天文シミュレーションプロジェクト」に分割・改組され発足したものです。従来のデータ解析計算センターの中で「大規模シミュレーション運用グループ」と呼ばれていた、理論シミュレーション用スーパーコンピューターと重力多体問題専用計算機 GRAPE の共同利用をおこなってきたグループが母体となっています。

国立天文台では、理論シミュレーション用スーパーコンピューターとして 1996年に富士通 VPP300、2001年には VPP5000が導入され、さらに同年からGRAPE の運用も開始し、理論天文学コミュニティのための共同利用計算機システムとして国内で唯一であるのみならず世界的にもユニークなものとなっています。

2007年度も、この年報にある通り多くのユーザーが利用し、数多くの研究成果をあげたことはプロジェクト長として嬉しい限りです。

2007年度末には計算機システムがリプレースされ、 VPP5000 が NEC SX-9 とCray XT4 の複合システムとなり、演算能力で50倍の増強を実現しました。また、GRAPE-7 システムも運用を開始し、従来の GRAPE-5 システムに比べると 30倍
の計算能力の増強を実現しました。Cray XT4 システムは国内では2008年6月時点のLINPACK ベンチマーク性能で6位となっており、国内最大級の計算機システムの1つです。また、今年度は新しく GRAPE-DR システムの運用開始も予定しており、さらなる計算能力の向上を図っていきます。

今後も、多くのユーザーが有効に研究に利用でき、素晴らしい研究成果をあげられるシステムを提供すべく努力を続けていきたいと考えています。


2008/7/10
天文シミュレーションプロジェクト プロジェクト長 牧野淳一郎


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