「第一回東アジア数値天体物理学会議兼 天文学データ解析計算センターユーザーズミーティング」報告

台坂博・石津尚喜 (天文学データ解析計算センター)

第一回東アジア数値天体物理学会議(East Asia Numerical Astrophysical Meeting,通称EANAM)が平成16年11月30日から12月2日まで国立天文台三鷹の 解析研究棟大会議室で開催されました。この会議は年に一度の天文学データ 解析計算センターユーザーズミーティングを兼ねていて、国内外から約100名の 参加がありました。そのうち海外からの参加者は19人で、韓国から7人、 台湾から6人、中国から5人、マレーシアから2人の参加がありました。

EANAMは日本を始めとして韓国、台湾、中国などの東アジア各国で数値 シミュレーションを用いて天文学を研究している人々の交流を目的と した会議です。今回、第一回会議として国立天文台三鷹で開催され、 次回は2006年に韓国Taejeon市天文韓国科学研究所で開かれる予定です。

会議は海部宣男国立天文台長や水本好彦天文学データ解析計算センター 長の挨拶で幕を開けました(写真1)。 会議は2日半に渡り行なわれ、Interstellar Medium(星間物質), Accretion/Accretion Disk(降着円盤), Star Formation(星形成), Sun(太陽), Turbulence(乱流), N-body/Galaxy Formation(N体計算/銀河形成), Planet(惑星), Supernova/General Relativistic Object(超新星/一般相対論的天体), Radiation Hydrodynamics(輻射流体力学)の分野における天文数値 シミュレーションの研究成果について34件の口頭発表と42件のポスター 発表があり、活発な議論が展開されました(写真2)。 例年の天文学データ解析計算センターのユーザーズミーティングとは 異なり、研究発表はすべて英語で行なわれました。英語を母国語としない 人々の集まりであったため質疑応答に多少、戸惑う場面も見られましたが、 会議自体は順調に進行しました。また、初日の午後の休み時間を利用して 4次元デジタル宇宙シアターの見学が行なわれ、その豊かな表現力に、 多くの見学者から驚嘆の声が上がりました。

東アジア各国の計算機環境ですが、発表からは、各国ともかなりの規模の 計算機環境が整備されている印象をうけました。数百台のPCからなる 並列計算機が導入されている研究機関もあり、こうした諸国と比較して、 計算機環境の面で必ずしも日本が絶対的優位に立っているのではもはやありません。 東アジア地域のシミュレーション天文学の発展はめざましく、多くのグループが 研究を競い合う状況になっていることが、共通の認識となりました。 この分野に於いて日本が東アジア諸国を牽引していくためには、土台となる ハード(計算機)の増強は必需で、研究グループ間の競争、若手研究者の育成、 さらにはソフトハード両面での開発なども行なっていく必要があると感じました。

最終日の午後には日本人のみで天文学データ解析計算センターの国内 利用者向けにビジネスミーティング(計算機運用などに関する研究発表以外の 議論の場)が行なわれ、共同利用機器の利用状況・稼働状況や各種講習会の報告、 および国立天文台の共同利用計算機環境を取り巻く諸行政事情に関する議論 が行なわれました。 講習会のあり方、および今後の新規利用者層の開拓方法や、長い目でいたこの 分野の進展に必要な事柄など、利用者の方々から多くのご意見をいただきま した。今後、頂いた意見をもとによりよい共同利用を目指したいと思います。 また、利用者の方々のさらなる研究の発展を期待します。

今回の国際会議の開催では、レジストレーション、ビザ申請のための書類作成、 旅費の補助、宿泊の確保などに関して、はからずも多くのノウハウが得られました。 しかしながら、そのために要した職員の労力も無視できません。 現状では国際会議や外国からのゲストに一元的に対応する組織が国立天文台には ないため、毎回各部署で同じような労力を重ねるという非効率なことが 起こっています。検討中の「国際研究支援室」のような組織が早急に 立ち上がる事が望まれます。

この会議の準備運営には天文学データ解析計算センターと理論研究部の方々、 特に泉塩子さんに多くのご協力をいただきました。どうもありがとうございました。 会議開催経費の一部は、国立天文台研究会経費(国立天文台研究交流委員会) および研究推進経費によってサポートされました。関係委員会に感謝致します。

図1: 海部宣男国立天文台長(左)と水本好彦天文学データ解析計算センター長(右)の挨拶。 図2: 講演風景 図3: 参加者の集合写真